戦わずして勝つとはどういう状態か 交渉と設計の話

この記事の結論

  • 孫子の「戦わずして人の兵を屈するは 善の善なる者なり」は、正面からぶつかる前に、相手が自分で「そうしよう」と思う構造を整える話だと読めます。
  • 仕事やビジネスでも、説得で押し切るより「条件の設計」「場のつくり方」で、自然に同じ方向を向けるかどうかが重要になります。
  • 力で押す場面を減らすために、「どんな相手と、どんな前提で、どんな選択肢を並べるか」を事前に決めておくことが、戦わずして勝つための実務だというのが今日のテーマです。

どうも岩崎です。

きょうは「戦わずして人の兵を屈するは 善の善なる者なり」を、交渉と設計の話として整理してみます。直訳すると「戦わずして相手を従わせる者こそ最上」という感じですが、これをそのまま現代語にすると、ちょっと物騒にも聞こえますよね。

私なりにかみ砕くと、「正面衝突や力押しで決める前に、相手が自分で納得してそう動きたくなる構造をつくりなさい」というメッセージだと捉えています。これは、営業でも価格交渉でもプロジェクト設計でも、そのまま通用する考え方だと思います。

説得と納得は別物という前提

まず押さえておきたいのは、「説得」と「納得」はまったく別物ということです。こちらが一方的に説明して、相手が渋々「分かりました」と言ってくれた状態は、表面的には決着していても、心の中ではモヤモヤが残っています。

一方で、相手が自分で条件を整理し、「それならこうしよう」と決めたときは、同じ結論でも納得度がまったく違います。あとから後悔もしにくいので、関係性も壊れにくい。孫子が言う「戦わずして」というのは、この後者の状態を指しているのだろうなと感じます。

相手が自分で決めたくなる「場」をつくる

では、どうやって納得の方に寄せていくか。ここで大事になるのが「場のつくり方」と「条件の並べ方」です。例えば、こんなイメージです。

  • いきなり結論をぶつけるのではなく、まず相手の「今どこで困っているか」を一緒に整理する。
  • こちらが用意しているプランを一つだけ押すのではなく、目的に応じて複数の選択肢を用意しておく。
  • 「こちらが得をする条件」ではなく、「相手が取りやすい一歩」から提案する。

写真やビジュアルに関する仕事であれば、「このプランが一番おすすめです」と押す前に、「今、どんな場面で見せ方に困っていますか」「どのくらいの頻度で写真が必要ですか」を一緒に棚卸しする。そこから、「単発撮影がいいのか、継続のサポートがいいのか」を、一緒に決めていく形にします。

このプロセスを丁寧にやっておくと、最終的には相手の口から「じゃあ今回はこのプランでお願いします」と言ってもらえるので、こちらが押し切る必要がほとんどなくなります。これが、戦う前に勝負を決めておく感覚に近いと思います。

交渉は「スタートライン」をどこに置くかで決まる

もう一つ、実務で意識しているのは「どこから話をスタートさせるか」です。例えば、料金の相談ひとつ取っても、

  • 単発の金額から話を始めるのか。
  • 年間や半期の全体像から話を始めるのか。
  • 「何枚撮るか」ではなく、「どんな結果を目指すか」から入るのか。

このスタート地点によって、同じ数字でも意味合いが変わってきます。いきなり単価だけを比べられると、「もっと安いところがあります」で終わってしまいますが、「1年後にこのレベルのビジュアル資産をそろえる」というゴールから話を始めれば、投資としての見え方が変わります。

孫子の「戦わずして」という言葉を、こうしたスタートラインの設計と重ねて見ると、「そもそもどの土俵で話をするかを決めなさい」というメッセージにも聞こえてきます。

ぶつからないための「フィルター」を決めておく

戦わずに済ませるためには、そもそも「ぶつからない相手」を選ぶことも大事です。これは、営業や集客の段階でどんなフィルターをかけるか、という話でもあります。

  • 自分の考え方や価値観を、発信の段階からある程度はっきり出しておく。
  • 料金だけを見て判断したい人ではなく、「一緒につくるプロセス」に価値を感じてくれる人に向けて話す。
  • お互いに無理をする契約条件は、最初から選択肢に入れない。

これをやっておくと、「話してみたら全然求めているものが違った」というギャップが減ります。もちろん、全てを事前に防ぐことはできませんが、「そもそも戦う必要がない勝負」を減らすだけでも、かなり楽になります。

明日は「兵は詭道なり」という言葉から、「見せ方が判断を左右する」という前提と、情報と現実のズレをどう扱うかについて整理していきます。

ではまた。

P.S.

先日、家族で夕飯を決めるときに、「今日は何が食べたい?」と真正面から聞いたら、案の定まったく意見がまとまりませんでした。

そこで「カレー」「鍋」「外食」の三択だけにして聞き直したら、ものの数秒で決まりました。最初からこうすれば良かったのですが、「戦わずして勝つどころか、毎回小さな内戦を起こしていたな」と静かに反省しています。


いわさき写真教室をもっと見る

購読すると最新の投稿がメールで送信されます。

いわさきじゅん

1998年に広告制作会社で写真が始まり、アートイベント会社の広報として活動していました。まだあまりウェブマーケティングが普及していない2006年からSEO(検索エンジン対策)・リスティング広告(PPC広告)・LPO(ホームページ対策)・コピーライティングなど、サポートをしています。