この記事の要点
- AIは「使えば使うほど考えなくなる」と単純に言えるものではなく、何をAIへ任せるかで影響が変わる可能性があります。
- 最初からAIに答えを求めるより、自分の仮説を作ってから反証や見落としを出してもらう方が、判断の主体を残しやすくなります。
- 重要な案件では、AIを開く前に「問題・原因・最初の一手」を3行だけ書くところから始めてみてください。
どうも岩崎です。
AIを使っていると、たまに「AIばかり使っていると、自分で考えられなくなるんじゃないですか?」って話を聞きます。まあ気持ちは分かるんですよ。文章も作ってくれるし、企画も考えてくれるし、何か分からなければ聞けばそれなりの答えが返ってきますからね。
でも私は、「AIをたくさん使う=考えなくなる」と単純に考えない方がいいと思っています。問題は使った回数よりも、何をAIに任せているかなんですよね。
同じAIを使っていても「任せ方」が違う
2026年7月にFrontiers in Psychologyで公開された研究では、生成AIへの「認知的オフローディング」、つまり自分の頭でやっていた処理をAIへ任せる行為について、「依存型」と「自律型」という違いから調べています。
ざっくり言えば、こんな違いです。
- 依存型:考える中心部分までAIへ任せ、AIが作った答えをあまり検討せず受け入れやすい使い方
- 自律型:自分の考えを持ちながら、AIをアイデアや検討の補助として使う方法
この研究は589人の大学生や若手知識労働者を対象にした3時点の調査で、依存型の使い方は「判断の主体をAIへ渡すこと」や内発的動機の低さと関連し、それらを通じて本人が感じる独立判断や深い思考などの認知的な結果とも不利な関連が見られました。一方、自律型では内発的動機や本人が感じる認知的な結果との関係がより良好でした。
ここは大事で、この研究だけから「依存型AI利用をすると実際の思考能力が低下する」と因果関係まで言えるわけではありません。研究者自身も、測っているのは主に本人が認識している認知的な状態であり、今後は実際の能力を測る実験などが必要だとしています。
ただ、それでも面白いのは「AIを使ったかどうか」ではなく、どういう形で思考をAIへ渡したかを分けて考えているところなんですよね。
「面倒だから任せる」と「考えるために任せる」は同じじゃない
例えば仕事上の問題が起きた時に、最初からAIへ「どうすればいい?」と聞く。AIがA案を出したら「なるほど」と思ってA案を採用する。これを繰り返せば、問題を定義するところから原因を考えて判断するところまで、かなりAIへ渡すことになります。
一方で、自分でまず、こんな仮説を作ってからAIを使う方法もあります。
- たぶん問題はここだと思う
- 原因はこれじゃないかと思う
- まずA案を試すのがいいと思う
そのうえでAIに「この考えの弱いところを出して」「反対意見を出して」「見落としている可能性は?」と聞く。同じようにAIを使っているんですけど、やっていることはかなり違いますよね。
前者は答えをもらうために使っていて、後者は自分の答えを疑うために使っています。
依存型でも便利だから、自分では気づきにくい
で、この研究でもうひとつ面白いのが、依存型と自律型のどちらでも、短期的には同程度のメリットが報告されていることです。
そりゃそうですよね。自分で30分考えるところをAIならすぐ処理してくれる。文章も作れるし、比較もできるし、案だって一気に出してくれる。なので本人からすると「AIを使ったら仕事が速くなった」と感じやすいわけです。
研究者も、この短期的な便利さのために、使い方の違いによる問題を本人が経験だけでは見分けにくい可能性を指摘しています。つまり「便利だから良い使い方」とは限らないってことですね。
じゃあAIは少ししか使わない方がいいのか?
ここで「だったらAIはなるべく使わない方がいいんだ」と考えたくなるんですけど、それも少し違うようです。
2026年5月にStrategic Organizationで公開された研究では、273人のビジネス実務者に、不確実性が高く時間制限のある市場参入判断をしてもらう実験を行っています。
そこで調べたのが、生成AIの利用と、アンカリング、確証バイアス、過信などの認知バイアスとの関係です。
結果はけっこう面白くて、AI利用が少なければ少ないほど良いわけでも、多ければ多いほど良いわけでもありませんでした。中程度の利用では、より強い認知処理と低いバイアスが見られ、利用が少ない場合と多い場合では、それより不利な結果が見られています。
つまりグラフにすると、単純な右肩上がりでも右肩下がりでもないんですね。
しかも差を生んでいたのは「AIを使った量」だけではありません。AIの回答をちゃんと疑って比較したのか、それともあまり検討せず受け入れたのかという、AIへの向き合い方も関係していました。
一人で仕事をしている人ほど、この使い方は大事だと思う
私は一人で仕事をしているので、この話はけっこう重要だと思っています。会社なら、自分が「これでいこう」と言った時に、隣の人が「いや、それ違うんじゃない?」と言ってくれるかもしれません。
でも一人だと、自分で思いついて、自分で納得して、自分で実行する。誰からも反論されないまま進むこともあります。だからAIって、めちゃくちゃ便利な相談相手になるんですよ。
ただ、その便利さを「答えを決めてもらうため」に使うのか、「自分の考えを壊してもらうため」に使うのかで、かなり意味が変わります。
最初に「どうすればいい?」と聞かない
例えば新しい商品を売っていて、売上が思ったほど伸びなかったとします。そこでいきなりAIに「売上が伸びません。どうすればいいですか?」と聞けば、広告、LP、SNS、価格、キャンペーンなど、いろいろな改善案を出してくれると思います。
でも最初にその回答を見てしまうと、それが自分の考える基準になりやすいんですよね。これはAIに限った話ではなく、人間の判断で昔から知られているアンカリングの問題にもつながります。
「広告が問題かもしれない」と最初に言われたら、広告の中ばかり探してしまうかもしれません。でも本当はリピート率なのかもしれないし、商品とターゲットが合っていないのかもしれないし、販売チャネルの問題かもしれません。
「仮説を作ってから壊してもらう」がちょうどいい
なので重要な案件ほど、AIへ最初から答えを聞かない方がいいと思っています。先に自分なりの仮説を作る。正しくなくても構いません。その後でAIを反論役にします。
- この仮説の弱点は何か
- 反証できる材料は何か
- 別の原因として何が考えられるか
- 私が見落としている前提は何か
- この判断が間違っているとしたら、どこが怪しいか
こうするとAIは「私の代わりに考えるもの」ではなく、「私だけでは出てこなかった視点を増やすもの」になります。
せっかく一瞬で反対意見まで作ってくれるんですから、自分に賛成してもらうだけに使うのはもったいないですよね。
今日やることは、AIを開く前に3行書くだけ
ということで、今日やっていただきたいことです。次に重要な仕事でAIを使う時、いきなり質問する前に、自分の考えを3行だけ書いてください。
- 私はいま何が問題だと思っているか
- 原因は何だと思っているか
- 最初に何を試すべきだと思っているか
長く書かなくていいです。各1行で十分です。その後でAIに、
「この仮説の弱点、反証、見落としている可能性を出して」
と聞いてみる。
AIに考えてもらってから自分が判断するのではなく、まず自分で考えて、その考えをAIに壊してもらう。便利だから使わない、ではもったいない。でも便利だから全部任せる、でもない。
考える主体は自分に残して、処理や反論役をAIへ任せる。
AIが賢くなればなるほど、この順番はかなり重要になると思います。
それでは!
よくある質問
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AIを使うと、自分で考える力は落ちますか?
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AIを使ったことだけで判断力が落ちるとは言い切れません。2026年の研究では、考える中心部分までAIへ任せる「依存型」と、自分の思考を残しながらAIを補助に使う「自律型」で、本人が感じる認知的な結果との関連が異なることが報告されています。ただし、これは実際の認知能力低下を直接証明した研究ではありません。
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仕事でAIへ最初に何を聞けばいいですか?
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重要な判断では、最初から「どうすればいい?」と答えを求めるより、自分の仮説を先に作り、その後で「弱点・反証・見落としている可能性を出して」と聞く方法があります。自分の判断軸を残しながら、AIを別視点の確認役として使えます。
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AIは使う回数を減らした方がいいのでしょうか?
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単純に回数を減らせばよいとは限りません。2026年のビジネス実務者を対象にした実験では、AI利用と認知バイアスには曲線的な関係が見られ、中程度の利用でより良い結果が報告されています。また、AIの回答を批判的に検討するかどうかも重要でした。
参考にした研究
- Frontiers in Psychology:Not all cognitive offloading is equal: distinguishing dependent and autonomous offloading to generative AI(2026年7月16日公開)
- Strategic Organization:Generative AI and cognitive biases in strategic decision-making(2026年5月26日公開)
P.S.
AIに「この考えで合ってる?」と聞くより、「この考えが間違っているとしたら、どこ?」と聞く。賛成役ではなく反対役にすると、AIの使い方がかなり変わります。
