この記事の要点
- AIの進化によって、画像制作・動画・コピー・分析など「作業」のコストは下がり続けています。
- 一方で「誰に売るか」「何を作るか」「どこを改善するか」といった事業固有の判断は残ります。
- 制作サービスも、納品物や作業量ではなく「どんな判断や事業成果に関わるのか」まで説明できる形に変えていく必要があります。
どうも岩崎です。
今日はちょっと怖いニュースからです。
AI企業Anthropicの研究者だったジェイコブ・コクソン氏が2026年9月8日に退職し、AI企業が高度なAI開発を競っている現在の状況について、かなり強い警告を出しました。
コクソン氏はAnthropicだけでなくOpenAIでの研究経験もあり、現在の開発競争が人類の存続に関わるリスクにつながる可能性を訴えています。Anthropicの他の研究者からも、同様に強い懸念が表明されています。
ただ、ここは分けて考えた方がいいです。
「AIによって2020年代末に人類が滅亡することが分かった」わけではありません。あくまでAIの最前線で研究してきた人による、重大なリスク評価です。実際、AIによる破局的リスクの大きさや時期については、研究者の間でも見解が分かれています。
なので、この話を煽るつもりはないんですけど、小さな会社や制作業をやっている私たちにとっても、ひとつ考えておいた方がいいことがあります。
「AIの進化速度を、今の延長線だけで考えない方がいい」
ということです。
半年後のAIを「今より少し便利」くらいに考えない方がいい
例えば今、AIで画像を作ったり、動画を作ったり、広告文を書いたりしている人は多いと思います。
でも半年後、1年後のAIを考える時に、「今のAIがもうちょっと上手になる」くらいで想像してしまうと、たぶんズレるんですよね。
前回紹介したAdobe Premiereの話もそうです。編集ソフトの中で不足したBロールや効果音を生成できるようになると、「撮影→編集」という工程そのものが変わってきます。
OpenAIも2026年7月、低価格モデルGPT-5.6 Lunaの価格を80%引き下げました。さらに企業向けでは、単純なAIの利用量だけではなく、AIによって生まれた成果に応じて料金を設定する考え方についても言及されています。
つまりAIは、性能だけではなく「使うコスト」の方も下がっているわけです。
制作業で先に安くなりやすいのは「手を動かす部分」
これは広告や制作の仕事をしている人には、かなり直接的な話です。
例えば、今まで人間が時間をかけてやっていた仕事があります。
- 画像のバリエーションを作る
- 縦・横・正方形へサイズ展開する
- 動画の素材を補完する
- 広告コピーを何案も作る
- 広告データを分析する
- 修正案を作る
こういう部分は、どんどんAIで短縮されています。
例えば昔なら3時間かかっていた作業が30分になった時、「3時間分の作業費です」と言い続けるのは難しくなりますよね。
AIを使えば使うほど効率が良くなる。でも作業時間で値段を説明していたら、効率が良くなるほど自分の商品の値段を下げる理由になってしまう。
これ、けっこう大きな問題だと思うんですよ。
「商品写真20カット」で売ると、20カットの値段を比較される
写真だったら、もっと分かりやすいです。
「商品写真を20カット撮影します」
というサービスがあったとします。
これはお客さんから見ると、「20カットの写真を作るサービス」です。そうすると当然、比較対象も20カットの制作費になります。
A社は10万円。B社は7万円。AIを使ったC社は3万円。
同じ20カットに見えるなら、「それなら安い方でいいんじゃない?」という比較に入りやすくなります。
ところが、本来その写真を撮る理由って「20枚のJPEGデータが欲しいから」じゃないですよね。
Amazonで商品を売りたいのかもしれない。広告のCTRを改善したいのかもしれない。LPで商品の質感を伝えたいのかもしれない。競合商品との違いを一目で分かるようにしたいのかもしれない。
だったら、価値の中心は「20カット撮ったこと」だけではないはずです。
AIが代わりに決めにくいのは「その会社では何をすべきか」
AIはかなり賢くなっていますし、これからもっと賢くなると思います。でも、事業にはその会社にしかない条件があります。
- 誰に売るのか
- 何を見せるのか
- どの順番で伝えるのか
- どこで顧客が離脱しているのか
- どの商品をフロントエンドにするのか
- 広告費をいくらまで使えるのか
- 粗利はいくら残るのか
- リピートやLTVまで考えて採算が成立するのか
こういう条件を与えれば、AIは分析や選択肢の提示をかなり手伝ってくれます。でも、その前提となる「この会社では何を目指し、何を優先するのか」まで自動的に決まるわけではありません。
だからAIが強くなるほど、人間側は「作れること」だけで勝負するより、何を作るべきかを判断できることの価値を考えた方がいいと思うんですね。
Visual Sellingも「制作物の集合」では足りなくなる
これはVisual Sellingも同じです。
写真を撮れます。デザインできます。LPを作れます。広告もできます。
これだけだと、サービスの説明としてはこうなります。
写真 → デザイン → LP → 広告
つまり「作れるもの」の一覧ですね。
でもAIによって制作工程が圧縮されていくなら、見るべき範囲をもう少し広げた方がいい。
顧客理解 → 表現 → 導線 → 計測 → 改善 → 利益
こっちです。
写真を撮ること自体が目的ではなく、「誰に何を伝えるのか」を決めて、そのために写真を使う。LPを作ること自体が目的ではなく、広告から来た人がどこで迷うのかを考えて情報を配置する。そして公開したら数字を見て、改善して、最終的に利益につなげる。
そう考えると、写真やLPや広告は目的ではなく手段になります。
AI時代は「作業量」で価格を説明しない
ここまで考えると、見積書の書き方も少し変わると思うんですね。
例えば、
「商品写真20カット撮影 ○○円」
だけだと、お客さんが見ているのは20カットという作業量です。
でも、
「広告・LP・ECで商品価値を一貫して伝え、比較検討を前へ進めるためのビジュアル設計」
とすると、見ている範囲が変わります。
もちろん名前だけ格好良く変えて、やっていることが同じなら意味はありませんw
重要なのは本当に、誰に見せるか、どこで使うか、何を伝えるか、どんなカットが必要か、広告やLPへどう展開するかまで考えることです。
つまり「作業の名前を変える」のではなく「提供する判断の範囲を広げる」ということですね。
今日、自分のサービスを1行だけ書き直してみる
ということで、今日は現在提供しているサービスを1つだけ選んでください。
見積書でもホームページでもいいので、そのサービスをどう説明しているか確認します。
そして、ひとつだけ考えてみてください。
「これは何を作るサービスではなく、お客さんのどんな事業判断や成果に関わるサービスなのか?」
例えば、
商品写真20カット撮影
だったものを、
広告・LP・ECで商品価値を一貫して伝え、比較検討を前へ進めるためのビジュアル設計
と考えてみる。
今日は価格を変える必要もありませんし、サービスを全部作り直す必要もありません。
まず、自分が売っているものを「作業量」から「判断と事業成果」へ置き換えられるか確認する。
AIの進化が速いからこそ、私はここを今のうちに考えておいた方がいいと思います。
それでは!
よくある質問
-
AIが進化すると、写真家や制作会社の仕事はなくなりますか?
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一律になくなるとは言えません。ただ、画像のバリエーション制作、サイズ展開、コピー案、分析など、一部の作業はAIによって効率化されています。そのため「作業時間」だけでなく、何を作るべきかという判断や設計まで提供価値に含めることが重要になります。
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「判断を売る」とは具体的にどういうことですか?
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制作物を納品するだけでなく、誰に売るか、何を伝えるか、どの媒体を使うか、どこを改善するか、採算が成立するかといった前提を整理し、その判断を制作へ反映することです。
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小規模事業者はAI時代にサービスをどう見直せばいいですか?
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まずサービスを1つ選び、「何を納品するのか」ではなく「顧客のどんな判断や成果に関わっているのか」を1文で説明してみると整理しやすくなります。名称だけを変えるのではなく、実際に提供する判断や設計の範囲も見直します。
参考情報
P.S.
AIで30分になった仕事を「昔は3時間かかったから」で売り続けるのは難しいですよね。だったら、その3時間で何を判断できるのかを売った方が面白いと思います。
