この記事の要点
- AI編集が増えるほど、完成画像の見た目だけでなく「どこまでが実写で、どう編集されたか」を後から確認できることが重要になります。
- AdobeのContent Credentialsは、デジタルコンテンツの「成分表示」のように、撮影・生成・編集などの制作過程を確認しやすくする仕組みです。
- まずは次の撮影案件1件だけ、実写マスター・編集後データ・納品データを分けて残すところから始められます。
どうも岩崎です。
商品写真って、今までは最終的に「ちゃんときれいに見えるか」が大事でしたよね。色がおかしくないか、質感が伝わるか、余計なものが写っていないか、広告やLPで使った時に見栄えがするか。
もちろん、これはこれからも大事です。でもAI編集が普通になるほど、もうひとつ別の品質が必要になってくると思っています。
「この画像は、どこまでが実写で、どこからが編集なのか?」を後から説明できること。
今日はそんな話です。
AIで写真を直すこと自体は、もう特別ではなくなってきた
今はAIを使えば、商品写真にいろいろな処理ができます。
- 背景を変える
- 不要物を消す
- 反射や影を整える
- 足りない背景を広げる
- 別のサイズや構図へ展開する
以前なら撮り直しや追加撮影が必要だったところを、編集工程の中で補える場面が増えています。制作側からすると便利ですし、私はAI編集を使わない方がいいとはまったく思いません。むしろ使えるところはどんどん使えばいいと思っています。
ただ、AIでできることが増えるほど、別の問題も出てくるんですね。
写真を見たお客さんの期待と、実物がずれていないか
例えばECの商品写真をAIできれいにしたとします。背景を変更して、反射を整えて、足りない部分を補って、広告用に調整する。見た目としては、完成度の高い画像になります。
でも、大事なのは、その写真を見たお客さんがどう感じるかです。お客さんは写真から、商品の色や質感、使い心地まで想像します。例えば、こんな期待を持つかもしれません。
- この形なら、手に持った時に使いやすそう
- この色なら、自分の部屋に合いそう
- この質感なら、触り心地がよさそう
- この光沢なら、高級感がありそう
- この仕上がりなら、贈り物にも喜ばれそう
こうした期待が、実物の魅力から生まれるならいいんです。でも、AIで整えた形や色、質感から生まれた期待だったらどうでしょう。届いた商品を見て「写真と違う」と感じれば、お店やブランドへの信頼にも関わります。
だからこそ、商品の魅力を伝えながら、実物と違う期待を生んでいないかを確かめる必要があります。元の写真や編集履歴を残すのも、その確認ができるようにするためです。お客さんに誤解を与える加工になっていないか、実写と見比べて確かめられることに意味があるんですね。
Adobeはこれを「デジタルコンテンツの成分表示」と説明している
そこで出てくるのが、AdobeのContent Credentialsです。
Adobeの公式説明では、Content Credentialsはデジタルコンテンツの「成分表示」のような役割をするメタデータとされています。誰が作ったかだけではなく、カメラで撮影されたのか、AIで生成されたのか、Photoshopなどで編集されたのかといった制作過程を確認しやすくする仕組みです。
AdobeではPhotoshop、Lightroom、Premiereなど複数の制作環境でContent Credentialsを利用できるようになっています。
ただし、ここは勘違いしない方がいいです。Content Credentialsが付いているから、その画像に写っている内容が全部「真実」だと証明されるわけではありません。
あくまで、どのように作られ、どう編集されたかという来歴や文脈を確認しやすくする仕組みです。
また、SNSなどの投稿先では、画像のアップロードや変換の際にメタデータが削除されることがあります。来歴情報を復元できる仕組みもありますが、どの掲載先でも必ず確認できるとは限りません。Content Credentialsだけに頼らず、自分たちで元データと編集履歴を保管しておくことが土台です。
これを意識すると、AIを使いながら商品写真の基準を守れる
この考え方を意識すると、AIを使うこと自体を怖がらなくてよくなります。
例えば撮影したオリジナルデータを「実写マスター」として残しておいて、その後に編集した画像を別データとして管理する。そうすれば「この商品形状は実物と同じですか?」と聞かれた時に、実写マスターへ戻って確認できます。
つまり、
実写マスター → 編集工程 → 納品データ
という関係を残しておくわけです。AIを使わないようにするのではなく、AIを使っても元の基準へ戻れる状態を作っておく。
私はこっちの方が現実的だと思います。
知らないままだと、制作した側でも「どれが本物?」になる
逆に、完成データだけを保存していると少し怖いです。
例えば半年後、その商品写真を別の広告へ使うことになった時に、こんなことが起こる可能性があります。
- どこまで撮影したものか分からない
- どこをAIで直したか分からない
- 商品の正しい色や形状を確認できない
- 別の担当者がAI編集部分まで実物だと思って使う
制作した本人は覚えているつもりでも、半年経ったらけっこう忘れますよねw 担当者が変われば、もっと分かりません。
AI編集が増えるほど、「何をしたかを覚えている人」に依存する管理は危なくなる。
だから完成画像だけではなく、来歴まで残す意味が出てきます。
撮影者の価値も「きれいに撮る」だけではなくなる
これは写真家や制作会社の仕事にも関係します。撮って、レタッチして、完成画像を納品する。その仕事に加えて、商品の姿を確認できる元データと、編集の記録を残すことにも価値が出てきます。
商品の形状、色、ロゴ、質感、サイズ感。こうした情報を実写マスターで確認できれば、別の広告や動画へ展開する時も、商品の大事な部分を変えていないか確かめられます。
つまり、魅力的に見せるだけでなく、お客さんが安心して商品を選べるように、写真の基準を守ることまで仕事に含まれていく。私はそう思っています。
今日の実務調整は、次の撮影1件だけでいい
ということで、いきなりすべての案件の管理方法を変える必要はありません。次の撮影案件1件だけで構いません。
AI編集前の実写マスターを保存し、編集後データと納品データを分けて管理する。
まずは次の3つを分けてみてください。
- 実写マスター
- 編集後データ
- 納品データ
そして対応する制作・書き出し環境なら、Content Credentialsも試してみる。
完成画像だけではなく、「どう作られた画像なのか」まで含めて管理する。
AI編集が普通になるほど、こういう地味な管理の方が写真そのものの価値を支えるようになると思います。
それでは!
よくある質問
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Content Credentialsとは何ですか?
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画像や動画などのデジタルコンテンツについて、作成者や撮影・生成・編集などの制作過程を確認しやすくするメタデータです。C2PAというオープン標準を基盤にしています。
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Content Credentialsがあれば、その画像が本物だと証明できますか?
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画像内容そのものの真実性を自動的に保証する仕組みではありません。誰が、どのような方法で作成・編集したのかという来歴や文脈を確認しやすくする仕組みです。
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商品写真では、まず何を残せばいいですか?
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まずはAI編集前の実写マスターを残し、編集後データ、納品データと分けて管理すると分かりやすいです。そのうえで対応するAdobeアプリなどではContent Credentialsも活用できます。
参考情報
P.S.
レタッチをしていると、元の写真がどうだったか分からなくなる瞬間があります。細かい部分を長く触っているうちに、全体のバランスが崩れて、どこをゴールにすればいいのか見えなくなるんですね。
だから、長く触り続けず、元の写真と見比べることが大事。その点、AIへの指示で狙いどおりに編集できると、元の画像の印象が残っているうちに仕上げられるので助かります。
「元の実写へ戻れる状態」というのは、データの話だけじゃなくて、作業している自分の目の話でもあるなと思います。
