この記事の要点
- 広告で新しい人を集める前に、カートまで進んだお客さんをどこで失っているか確認する価値があります。
- 写真・動画で認知と理解を作り、コピーで意味づけと納得を作っても、送料・納期・支払方法など購入直前の情報が弱ければ売上にはなりません。
- 販売設計は「認知 → 理解 → 納得 → 購入 → 再購入」まで一本につなぎ、取りこぼしたお客さんへの再接触まで含めて考えます。
どうも岩崎です。
売上を増やしたいとなると、まず広告を増やそうって考えやすいですよね。広告費を増やす。アクセスを増やす。新しいLPを作る。新しい人を連れてくる。
もちろん、それも必要です。
でもその前に、一度見た方がいい場所があります。
すでに商品を見て、価格も確認して、カートまで入れたお客さんを、どれくらい最後で取りこぼしているだろう?
新しい人を連れてくるより、こちらを直した方が早い場合もあるんですね。
今日はそんな話です。
カートへ入れた10人のうち、6人以上が購入前に離脱していた
2026年上半期の国内ECについて、e-365株式会社がカゴ落ちに関する調査を公表しています。
e-365は、EC向けのマーケティングツールなどを提供している会社です。今回の数字は、同社が提供するカゴ落ち特化型MAツール「CART RECOVERY」の利用データをもとに、2026年1月〜6月の状況をまとめたものです。
なので、日本のEC市場全体を代表する統計というより、実際に同ツールを利用しているECサイトで起きた傾向を見るデータとして扱うのが適切です。
その前提で数字を見ると、かなり大きいです。
| 2026年上半期の調査結果 | 数値 |
|---|---|
| 平均カゴ落ち率 | 63.48% |
| カゴ落ちによる機会損失額 | 実売上高の約2.85倍 |
| カゴ落ちメール平均開封率 | 42.0% |
| カゴ落ちメールによる売上創出貢献額 | 約31.49億円 |
平均カゴ落ち率は63.48%。単純に考えると、商品をカートへ入れた10人のうち6人以上が、購入まで進まずに離脱したことになります。
しかも同社の推計では、カゴ落ちによる機会損失額は実際の売上の約2.85倍です。
「売れていない人」を探すというより、「買う直前まで来ていたのに売上にならなかった人」がかなりいる。
ここを見ると、広告を増やす前に確認したくなりますよね。
カートへ入れた時点で「興味がない人」とは少し違う
もちろん、カートへ入れたから必ず買うつもりだったとは限りません。
後で買うために入れた。送料を見るために入れた。他の商品と比較するために入れた。なんとなく保存代わりに入れた。いろいろあります。
なので63.48%全部を「本来取れた売上」と考えるのは違います。
ただ、少なくとも何も知らない人よりは、かなり購入に近いところまで進んでいます。
商品を見て、写真を見て、価格を見て、場合によっては説明まで読んで、その上でカートへ入れている。
この人たちがどこで止まったのかを見る価値はある。
ここですね。
10月も「買わない」というより、最後の判断が慎重になっている
市場全体を見ると、2026年10月の博報堂生活総合研究所「来月の消費予報」では、消費意欲指数は45.7点です。
前月比-0.1ポイント、前年比+0.4ポイントで、どちらもほぼ横ばいです。
なので「10月は急激に買物意欲が落ちている」という状態ではありません。
一方で、「物価高・値上げ・円安」を消費意欲が下がる理由として挙げる回答は、前年10月の112件から2026年10月は164件へ増えています。
こういう状況だと、お客さんも以前より慎重になりますよね。
- 本当にこの価格で買っていいだろうか?
- 送料を入れると結局いくらになるだろう?
- 他のサイトの方が安くないだろうか?
- もう少し調べてからでもいいんじゃないか?
「欲しくない」だけではなく、最後の判断に時間が掛かっている可能性も考えた方がいいと思います。
写真とコピーを良くしても、最後で落としたら売上にはならない
ここは、これまで話してきた視覚を活用した販売設計ともつながります。
私は、写真や動画とコピーを大きくこんな役割で考えています。
- 写真・動画 → 認知・理解・印象形成
- コピー → 意味づけ・納得・販売力
写真で目に留まってもらう。動画で商品を理解してもらう。コピーで「なぜ必要なのか」「何が違うのか」を理解してもらう。
そこまでうまくいっても、購入画面へ行ったら、
- 送料が最後まで分からない
- いつ届くのか分からない
- 使いたい支払方法があるのか分からない
- 返品できるのか分からない
- 定期購入なのか単品購入なのか分かりにくい
- 最終的にいくら払うのか分からない
となったら、その数分で止まってしまいます。
ここまで掛けた広告費、撮影費、動画制作費、コピー制作の全部が、最後の数分で売上にならなくなる。
めちゃくちゃもったいないですよね。
販売設計は「購入」までで終わりではない
なので販売導線は、広告からカートまでではなく、もう少し長く見た方がいいと思います。
認知 → 理解 → 納得 → 購入 → 再購入
この途中でどれだけ人が減っているのかを見る。
広告管理画面のCPAだけでは、この全体は分かりません。
どれだけクリックされたかだけでも分からない。
どこまで進んだ人を、どこで失っているのか。
ここを見る必要があります。
新しい100人を連れてくる前に、今いる100人を見る
例えば広告から100人が商品ページへ来たとします。
そのうち20人がカートへ入れて、7人が購入した。
この場合、13人はかなり購入に近いところまで来たのに離脱しています。
| 段階 | 人数 |
|---|---|
| 商品ページへ来た | 100人 |
| カートへ入れた | 20人 |
| 購入した | 7人 |
| カート投入後に離脱した | 13人 |
ここで新しい100人を広告で連れてくることもできます。
でも、すでにカートまで来た13人のうち何人かに戻ってもらえるなら、その方が広告費を増やさず売上を作れる可能性があります。
集客を増やすことと、取りこぼしを減らすことは別の仕事です。
売上を増やしたい時って前者ばかり考えますけど、後者も見た方がいいんですね。
カゴ落ちした人は「一度断った人」ではない
ここも考え方として大事だと思います。
カゴ落ちを見ると、「買わなかった人」と考えがちです。
でも実際には、
- 時間がなくなった
- 送料を見て一旦考えた
- 他の商品と比較している
- カードを手元に持っていなかった
- 家族に相談しようと思った
ということもあります。
つまり、「いらない」と判断した人と、「まだ決めていない人」が一緒になっているんですね。
だから一度離脱したからといって、関係が終わったわけではありません。
カゴ落ちメールの開封率42%が示していること
e-365の調査では、カゴ落ちしたお客さんへ送るメールの平均開封率は42.0%でした。
さらに調査対象サイトでは、2026年上半期にカゴ落ちメールが約31.49億円の売上創出に貢献したと報告されています。
もちろん、この数字は同社のツール利用サイトの実績なので、すべてのECで同じ結果になるわけではありません。
でも一度カートまで来た人に再接触することで、売上へ戻る人がいることは分かります。
そして私は、ここがDRMとしてかなり自然だと思うんですね。
興味を持った人と、その後も関係を続ける。
新しい人を集め続けるだけではなく、一度接点を持った人との関係を見る。
DRMって本来こっちですよね。
再接触は「買ってください」をもう一度送ることではない
ただし、カゴ落ちした人へ「まだカートに商品があります!今すぐ買ってください!」と何度も送ればいいわけではありません。
なぜ止まったのかは人によって違います。
例えば、
- 送料が気になっているなら → 送料や総額を説明する
- 商品比較で迷っているなら → 違いを整理する
- 使い方が不安なら → 使用方法を動画で見せる
- 価格で迷っているなら → 価格の理由や価値を説明する
- 信頼面で迷っているなら → レビューや検証データを見せる
というように、止まった理由を減らす情報を出す。
追いかけるというより、判断できなかった理由を補う。
この方が自然だと思います。
収益設計では「売上を足す」だけでなく「漏れを塞ぐ」
売上を増やすというと、どうしても足し算で考えます。
- 広告費を増やす
- 商品を増やす
- キャンペーンを増やす
- SNS投稿を増やす
でも収益は、漏れているところを塞いでも増えます。
広告費を追加しなくても、今まで7人しか買わなかったところが8人、9人になれば売上は増えます。
しかも新規集客と違って、一度広告費を払って集めた人の中から増やせる可能性があります。
売上を作ることだけでなく、すでに作りかけている売上を落とさない。
金曜日の収益設計なら、ここも見ておいた方がいいと思います。
今日のチェックリスト
最後に、主力商品を1つだけ選んで、自分に次の質問をしてみてください。
- カートへ入れた人数を把握できているだろうか?
- そのうち何人が購入したか分かるだろうか?
- カート投入後に何人離脱しているだろうか?
- 送料・納期・支払方法・返品条件・最終価格は、購入前に分かりやすくなっているだろうか?
- 離脱したお客さんへ、メールやリマーケティングなどで再接触する仕組みはあるだろうか?
今日はLPも広告も直さなくて構いません。
まず、
カート投入数 → 購入数 → 離脱数
だけ見てみる。
そして、「思ったより取りこぼしてるな」と分かったら、その次に原因を見ればいいと思います。
新しいお客さんを増やす前に、すでにかなり購入に近いところまで来ているお客さんをどれだけ失っているのかを見る。
まずここからで十分です。
それでは!
よくある質問
-
カゴ落ち率とは何ですか?
-
商品をカートへ入れたものの、購入完了まで進まず離脱した割合です。ただし、カートへ入れた人全員が必ず購入するつもりだったとは限らないため、カゴ落ち率すべてを失った売上と考えるのは適切ではありません。
-
カゴ落ちした人には何を送ればいいですか?
-
単に購入を催促するのではなく、送料、比較、使い方、価格の理由、レビューなど、購入判断を止めている可能性がある情報を補う方が自然です。実際の配信では、頻度や表現にも配慮する必要があります。
-
カゴ落ち率63.48%は日本のEC全体の平均ですか?
-
日本のEC全体を代表する統計ではありません。e-365が提供するカゴ落ち対策ツール「CART RECOVERY」の利用データをもとにした2026年上半期の自社調査です。そのため、市場全体の確定値ではなく、同ツール利用サイトでの傾向を見るデータとして扱うのが適切です。
P.S.
新しい100人を連れてくる前に、カートまで来た10人のうち何人を失っているかを見る。広告費を増やさなくても売上を改善できる場所って、意外とこういうところにあります。
