この記事の要点
- 相手から不満を言われた時に、別の不満で言い返すと、本来の論点が消えやすくなります。
- 感情的になった時は、すぐ反論するより、一呼吸置いて「今の論点は何か」を確認する方が話し合いやすくなります。
- 不満は溜め込んで爆発させるより、小さいうちに具体的な行動として伝えた方が関係を壊しにくくなります。
どうも岩崎です。
今日は、喧嘩を悪化させる「お前だって」の話です。
例えば、待ち合わせに遅れてきた相手に「また遅刻?いつもそうだよね」と言ったとします。
すると相手が、「お前だってこの前遅れたじゃん」と返してくる。
ありますよね、こういうの。
で、ここから話がおかしくなっていきます。
最初の論点は「今日遅刻したこと」だったはずなのに、いつの間にか先週の遅刻の話になり、さらに「そもそもあなたはいつも○○だ」と過去の不満まで出てくる。
最後には、何について喧嘩していたのか分からなくなりますw
こういう、相手からの不満に対して別の不満を返すやり取りを「クロスコンプレーニング」と呼ぶことがあります。
名前は難しいですが、やっていることは単純です。
「あなたが悪い」
「いや、お前だって悪い」
という応酬です。
「お前だって」と言った瞬間に論点が変わる
クロスコンプレーニングの何が問題かというと、最初の問題が解決されなくなることです。
例えば「今日遅刻して困った」という話をしているのに、「お前も前に遅刻した」と返されたら、今日の遅刻について話せなくなります。
すると今度は、
「私はあの時ちゃんと謝ったでしょ」
「いや、謝り方が悪かった」
みたいな別の話が始まります。
問題が一個だったはずなのに、どんどん増えていくんですね。
これは仕事でも同じです。
「この資料、数字が間違っています」と言われた時に、「でも、そちらの指示も分かりにくかったですよね」と返す。
たとえそれが事実だったとしても、その瞬間に「数字の間違いをどうするか」という話から、「どっちが悪いか」という話へ変わります。
これが一番まずいんですよね。
正しいかどうかより、先に感情が動く
「お前だって」と言い返したくなる時って、だいたい自分も攻撃されたように感じています。
相手から「あなたが悪い」と言われた気がする。だから、自分を守るために相手の悪いところを返したくなる。
これ自体は、人間としてかなり自然な反応だと思います。
問題は、その反応をそのまま口から出してしまうことです。
感情が動いた瞬間に返すと、相手の言葉の意味より「攻撃された」という感覚へ反応してしまうことがあります。
だから、こういう時ほど一回止める。
ここで深呼吸が使えます。
深呼吸は、怒りを消すためではなく「間」を作るため
深呼吸するとイライラが全部消える、という話ではありません。
腹が立つものは腹が立ちますからね。
でも、一度ゆっくり息を吐くだけで、「すぐ言い返す」という反射の間に少し時間を作れます。
この数秒が結構大事なんです。
すぐ言い返す代わりに、
「今、何について話しているんだっけ?」
と一回戻れる。
相手が言いたいのは、私を攻撃したいのか。それとも本当に困ったことを伝えたいのか。
そこを考える時間を少し作るんですね。
ゆっくりした呼吸は、ストレス反応や自律神経系との関係も研究されています。ただ、私が実際に使いやすいと思う理由はもっと単純で、「口を開く前に数秒の間を作れる」ことです。
「いつも」「絶対」を使うと喧嘩は大きくなりやすい
もう一つ気をつけたいのが、「いつも」「絶対」「毎回」みたいな言葉です。
「あなたはいつも遅刻する」
と言われたら、相手は「いや、いつもじゃない」と反論したくなりますよね。
ここでまた論点がズレます。
本当は「今日遅刻されて困った」という話なのに、「私は本当にいつも遅刻しているのか」という話になります。
なので、なるべく今日起きた具体的なことに絞った方がいいです。
「今日30分待ったので困った」
「次から遅れそうなら連絡してほしい」
これなら相手も、何を直せばいいのか分かります。
人間そのものを責めるのではなく、具体的な行動について話すんですね。
不満は「溜めてから全部出す」と大きくなる
喧嘩が大きくなる時って、その日に起きたことだけが原因じゃない場合も多いです。
前から気になっていた。
でも我慢した。
またあった。
また我慢した。
それが10個くらい溜まったところで爆発する。
すると本人としては10個分怒っています。でも相手からすると、今日一個しかやっていないので、「なんでそんなに怒るの?」となります。
ここでまた、「前からずっとそうだった」「そんなの知らない」という喧嘩になる。
だったら、10個になる前に1個ずつ出した方がいいんですよね。
その時に感情をぶつけるのではなく、「これをされると困るので、次からこうしてほしい」と具体的に伝える。
小さい問題のうちなら、話も小さく済みます。
撮影現場では「何でそう言っているのか」を先に聞く
撮影現場でも、クライアントと意見が合わないことは普通にあります。
こちらとしては、この光の方がいいと思っている。でもクライアントは「もっと明るくしてください」と言う。
ここで、
「いや、この方が商品の立体感が出るんです」
とすぐ言い返すと、相手も「でもこっちは明るくしてほしいと言っているんです」となります。
そこから「写真のことはこっちの方が詳しい」「いや、商品を知っているのはこちらだ」という話になったら最悪ですよねw
なので、意見が違った時ほど一回聞くようにしています。
「ちなみに、もう少し明るくしたいのは、どういう意図でしょうか?」
と。
すると、「ECサイトに載せた時に暗く見えるのが心配なんです」という話かもしれない。
だったら、こちらも「それなら明るさではなく背景とのコントラストを調整しましょう」という別の案を出せます。
「明るくするか、しないか」で争っていたら出なかった答えです。
つまり、意見がぶつかった時こそ、相手の要求の奥にある理由を聞いた方がいいんですね。
勝つことを目的にすると、話し合いは負ける
喧嘩になると、途中から「問題を解決する」より「自分が正しいことを証明する」に目的が変わることがあります。
相手の矛盾を探す。
過去の失敗を持ち出す。
言い負かそうとする。
これで言い争いには勝てるかもしれません。
でも、相手との関係まで良くなるわけではありません。
仕事なら、目的はクライアントを論破することではなく、良いものを作ることですよね。
家庭なら、相手を言い負かすことではなく、これから一緒に気持ちよく過ごすことのはずです。
だったら、途中で「私は今、何に勝とうとしているんだろう?」と考えてみるのもいいと思います。
どうしても冷静になれないなら、その場で解決しなくていい
とはいえ、一呼吸置いたくらいでは全然ダメな時もあります。
もう完全に腹が立っている。
何を言われてもムカつく。
こういう状態で「冷静に話し合いましょう」なんて無理ですよね。
だったら、その場で解決しなくてもいいと思います。
「今はちょっと冷静に話せそうにないので、一度時間を置きたい」
と伝えて離れる。
10分でもいい。
1時間でもいい。
場合によっては、一晩でもいいと思います。
大事なのは逃げることではなく、戻ってきて話すことです。
熱くなった状態で余計な一言を言ってしまうより、少し時間を置いてから話した方が、結果的には早く解決することもあります。
相手にムッとしたら、まず一呼吸
ということで、相手に何か言われて「ムッ」とした時に、まずやってほしいのは反論ではありません。
一度息を吐く。
それから、
「今の論点は何だろう?」
と考える。
相手が「今日遅刻して困った」と言っているなら、まず今日の遅刻について話す。
こちらにも言いたいことがあるなら、その話が終わってから別の問題として話せばいいんです。
一つずつ話す。
これだけでも、かなり泥沼になりにくくなります。
感情的にならない人になる必要はありません。
感情が動いた時に、すぐ相手へ投げ返さない人になればいいんだと思います。
今週は心理学にまつわる話を7本お届けしました。どれも特別な道具が必要なことではなく、日常の中で少し意識すれば試せることばかりです。
それでは、良い1週間を!
よくある質問
-
クロスコンプレーニングとは何ですか?
-
相手から不満や批判を言われた時に、「お前だって」と別の不満を返すようなやり取りです。本来の問題について話す代わりに、お互いの不満をぶつけ合う形になりやすく、論点がずれて話し合いが進まなくなることがあります。
-
深呼吸をすれば、本当にイライラは収まりますか?
-
一度の深呼吸で怒りが完全に消えるわけではありません。ただ、ゆっくりした呼吸はストレス反応との関係が研究されており、実践上も「すぐ言い返す」前に数秒の間を作る方法として使えます。その時間で、何について話しているのかを整理し直します。
-
どうしても感情的になってしまう時はどうすればいいですか?
-
その場で解決しようとしない方法もあります。「今は冷静に話せないので、少し時間を置きたい」と伝えて一度離れ、落ち着いてから戻ります。ただし、そのまま話を放置するのではなく、いつ話し直すかを決めておくとよいです。
P.S.
長く一緒に仕事をしている人でも、意見が合わないことは普通にあります。そんな時、昔はその場で全部解決した方がいいと思っていました。でも、熱くなっている時ほど余計なことを言いやすいんですよね。
今は「今日はここまでにして、明日もう一度話そう」も普通に選択肢にしています。一呼吸で足りなければ、一晩置けばいい。早く解決することより、壊さずに解決することの方が大事だと思っています。
