どうも岩崎です。
先日、娘とショッピングモールを歩いていたときのことです。休日のモールって、財布が軽くなるスピードが異常に早いですよね。目的地に着く前に、ゲームセンターの前で立ち止まりました。
娘がぬいぐるみを見つけてこう言うんです。
「お父さん、これ2個取っていい?」
私は思わず「いや、それはダメ」と返します。するとすかさず、「じゃあ1個だけでもいい?」と。
…気づいたら100円玉を渡していました。完敗です。
でも、これ実は心理的にちゃんと説明がつくんですよ。いわゆるドア・イン・ザ・フェイス・テクニックというものです。

人は「譲ってもらった」と感じると、譲り返したくなる
心理学で言われているのは、最初に大きなお願いをして断られたあとに、小さなお願いを出すと通りやすくなるという現象です。
最初に「2個取っていい?」という大きなお願いを出すことで、私の中に「断っちゃったな…」という罪悪感が生まれる。その直後に、娘が「譲歩してくれたように見える」お願いを出す。
結果、「まあ1個くらいなら」と私の手が動くわけです。恐ろしいですよね。普段は私がマーケティングでこの心理を教えている側なのに、家庭内では見事に実践されてしまいました。
セールスも交渉も、言葉より順番
営業でもまったく同じ構造が使えます。
たとえば、最初から「3万円です」と言うよりも、「通常は10万円なんですが、今回は特別に3万円で」という伝え方の方が断然通りやすい。価格は同じでも、心理的な位置づけが変わるからです。
広告コピーでよく見かける「本来であれば〜」「通常価格では〜」という表現も、実はすべてこの構造を応用しています。つまり、単なる値引きではなく、譲歩の演出なんです。
断られることを、怖がらない設計にする
多くの人は、断られることを嫌がります。「NO」と言われた瞬間に心が折れてしまう。
でも本当は、最初のNOこそが次のYESを生むんです。人は一度断った相手に対して、無意識に「悪いな」と感じる傾向がある。そのバランスを取るために、次のお願いには応じやすくなる。
だから、マーケティングでも営業でも、最初の提案は少し高めに出した方がいい。たとえばセミナー案内なら、「10万円の講座もありますが、まずは無料体験から参加できます」と見せた方が、心理的ハードルがぐっと下がります。
マーケティングは「心理の順番」をデザインする仕事
セールスも文章も、人を動かすのはロジックではなく順番です。
いきなり「買ってください」ではなく、「まずは見てみませんか?」から始めた方がスムーズ。恋愛でもそうですよね。いきなり「付き合ってください」ではなく、「ちょっと相談に乗ってもらえます?」から流れを作る。
つまり、人は説得ではなく、流れで動くんです。ドア・イン・ザ・フェイスの本質は、「断らせる勇気」と「譲歩のデザイン」。その流れを設計できる人が、結果的に選ばれる側になります。
人は内容で動くのではなく、順番で動く。ここを意識できるかどうかで、結果はまるで変わります。
P.S.
その日の帰り道、娘が言いました。
「お父さん、クレーンゲーム難しかったね。今度は一緒にやろ?」
……また財布が開きました。きっとこれも、ドア・イン・ザ・フェイスです。
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