この記事の要点
- 消費者庁は2026年9月、ダークパターンへの規律を含むデジタル取引制度の中間取りまとめを公表しました。
- 問題なのは、強いCTAや期限表示そのものではなく、お客さんが条件を理解して自分で選べる状態になっているかです。
- これからのECでは、CVRだけでなく「断れる・戻れる・条件が分かる」まで含めて導線を設計する必要があります。
どうも岩崎です。
ECやLPを改善していると、「どうしたらもっと押してもらえるか」を考えますよね。CTAを大きくする。色を変える。残り在庫を表示する。期間限定にする。途中でポップアップを出す。
もちろん、こういう工夫そのものが悪いわけではありません。お客さんが迷わないように分かりやすくするのは大事ですし、本当に在庫が少ないなら、それを伝えた方が親切です。
ただ、これからはもうひとつ考えた方がいいことがあります。
そのUIは「選びやすくしている」のか、それとも「断りにくくしている」のか。
今日はそんな話です。
ECのUIそのものが制度の検討対象になってきた
2026年9月10日、消費者庁は「デジタル取引・特定商取引法等検討会」の中間取りまとめを公表しました。
消費者庁長官の会見では、この中にダークパターンについての規律などによる、インターネット取引環境の適正化に向けた制度改革が盛り込まれていると説明されています。
さらに9月16日からは、この中間取りまとめについてパブリックコメントも始まっています。
なので現時点で「新しいダークパターン規制が成立した」という話ではありません。まだ制度の具体化に向けた検討段階です。
ただ、ECやWebサイトの画面の作り方そのものが、消費者政策上の論点としてかなり明確に扱われ始めているところは見ておいた方がいいと思います。
そもそもダークパターンとは何なのか
消費者庁はダークパターンについて、一般的にお客さんが気付かない間に、不利な判断や意思決定をしてしまうよう誘導するWebデザインなどと説明しています。
例えば分かりやすいのが、こんな表示です。
- 「残り10分」と表示して急がせるが、10分後も同じ条件が続いている
- サブスクリプションへの登録は簡単なのに、解約方法が分かりにくい
- 契約を続けるボタンばかり目立ち、断る方法が見つけにくい
- 料金や条件が購入直前になるまで分からない
要するに、普通に見れば自分で選んでいるように見えるけど、画面の設計によって特定の行動へ強く寄せられている状態ですね。
「売れるUI」と「ダークパターン」は近いところにある
ここはEC制作ではけっこう難しいところだと思います。
なぜなら、私たちは普段からこんなことを考えているからです。
- どのCTAなら押してもらいやすいか
- どこに限定表示を入れるか
- どうすれば今すぐ行動してもらえるか
- ポップアップをどこで出すか
- どこまで入力項目を減らせるか
どれもCVR改善では普通の話です。
でも「押してもらいやすくする」を強くしすぎると、どこかで「押さないという選択をしにくくする」に変わることがあります。
この境界が、これからかなり大事になると思うんですね。
「残り3個」と表示すること自体が問題ではない
例えば「残り3個」と表示するケースを考えてみます。
本当に在庫が3個しかないなら、お客さんに伝えた方がいいですよね。来週買おうと思っていた人にとっても重要な情報です。
「本日23時59分まで」という表示も、本当にその時間でキャンペーンが終わるなら問題ありません。
逆に、ページを更新するたびにカウントダウンが最初から始まったり、翌日になっても同じ「本日限定」が続いていたら話が変わります。
急がせることが問題なのではなく、事実ではない急ぎを作って判断を歪めることが問題になる。
Visual Sellingでも、ここはかなり重要だと思います。
強い写真も強いCTAも、使い方次第です
商品を魅力的に撮ることも、CTAを目立たせることも、私は悪いことだとは思いません。
そもそも商品写真の役割は、商品の良さを分かりやすく伝えることですし、「購入はこちら」が背景に埋もれてどこにあるのか分からない方がお客さんには不親切です。
だから問題は「強く見せるかどうか」ではなく、正しい情報を分かりやすく見せた上で、お客さん自身が選べるようになっているかなんですね。
ここを基準にすると、判断しやすくなります。
売れる仕組みを入れただけなのに、ブランドが損をすることもある
特に気をつけたいのは、悪意がなくてもダークパターン的な導線が入ってしまうことです。
今はECのテーマやプラグイン、アプリに「売上を上げるための機能」が最初からたくさん入っています。
- カウントダウン
- 在庫残数表示
- 離脱防止ポップアップ
- 定期購入への誘導
- アップセル
便利なので、そのまま使いたくなるんですね。
でもテンプレート側が用意しているからといって、その表示がお客さんとの関係まで考えて作られているとは限りません。
短期的にはクリックが増れても、「思っていた条件と違った」「解約方法が分からない」「急かされて買ってしまった」と感じれば、返品や問い合わせ、低評価レビューにつながるかもしれません。
そう考えると、CVRだけ見て判断するのは少し危ないんですね。
消費者庁の調査でも、解約を妨げる設計の影響が確認されている
消費者庁は2026年6月、ダークパターンについての消費者意識調査も公表しています。
この調査では、架空の動画配信サービスを使って、契約や解約の画面を実際に操作してもらう実験も行われました。
その結果、解約を妨げるダークパターンが強くなるほど、「解約しなかった」割合が高くなる傾向が確認されています。
もちろん、これは一定の条件で行われた実験なので、すべてのECやサブスクで同じ結果になるという意味ではありません。
ただ、「画面の作り方なんてそんなに行動へ影響しないでしょ」とは言い切れないわけですね。
これからの「信頼」は商品写真やレビューだけではない
ECで信頼というと、今まではこんなものを考えることが多かったと思います。
- 商品写真がきれい
- レビューが多い
- 会社情報がしっかりしている
- 検査結果や実績がある
もちろん、これらも大事です。
でもこれからは、それに加えて「ちゃんと選べるサイトであること」自体が信頼になると思います。
- 料金や条件が買う前に分かる
- 迷ったら前の画面へ戻れる
- 買わない選択も普通にできる
- 定期購入なら、その条件が分かる
- 契約後の変更や解約方法が見つかる
こういうところまで含めて、ブランド体験なんですよね。
「選ばせる」と「選んでもらう」は似ているようで違う
マーケティングでは、お客さんに行動してもらうことを考えます。
でも私は、ここを「買わせる」ではなく「選んでもらう」と考えた方が長く商売しやすいと思っています。
必要な情報を出す。迷わないように整理する。良さをちゃんと伝える。その上で、買うかどうかはお客さんが決める。
この状態なら、売るための導線と、お客さんの判断を守る導線は対立しません。
むしろ分かりやすい方が買いやすいですし、納得して買った方が、その後の関係も続きやすいですよね。
今日の実務調整は「買わない側」でサイトを見る
ということで、今日は主力のECかLPを1つだけ選んでください。
そして今度は「買う人」としてではなく、「途中で買わないと決めた人」として最初から最後まで操作してみます。
見るのは、この4つです。
- 誤認させる表示:実際の条件と違う印象を与えていないか
- 不自然な急かし:事実ではない期限や在庫で焦らせていないか
- 条件の隠れ:料金、定期購入、送料などが後から出てこないか
- 離脱・解約のしにくさ:買わない、戻る、変更する、解約する方法が見つかるか
全部を直す必要はありません。
今日は、その中で一番「これはちょっと断りにくいな」と感じたものを1つだけ直す。
CVRを上げる施策をもう1つ足すのではなく、信頼を削る可能性があるものを1つ減らす。
これからのECでは、こういう改善もかなり大事になってくると思います。
それでは!
よくある質問
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ダークパターンとは何ですか?
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一般的に、お客さんが気付かない間に不利な判断や意思決定をしてしまうよう誘導するWebデザインなどを指します。消費者庁では、実際には条件が続くのに期限が迫っているように見せる表示や、サブスクリプションの解約方法を分かりにくくする例などを紹介しています。
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「残り○個」や「本日限定」と表示するとダークパターンになるのでしょうか?
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表示そのものだけで決まるわけではありません。実際に在庫が少ない、期間が本当に決まっているなど、事実を分かりやすく伝える場合とは区別して考える必要があります。実態と異なる期限や条件を示して判断を急がせるような設計には注意が必要です。
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2026年9月から新しいダークパターン規制が始まったのですか?
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いいえ。2026年9月時点では、消費者庁の検討会が中間取りまとめを公表し、その内容についてパブリックコメントが行われている段階です。新しい包括的な規制がすでに施行されたという意味ではありません。
参考情報
P.S.
「どうすれば押してもらえるか」だけでなく、「押さなくても困らないか」まで確認する。この視点を入れるだけでも、ECの見え方はかなり変わると思います。
