この記事の要点
- 楽天市場は「楽天食いしんぼう祭」で、ECとリアル会場を共通スタンプなどでつなぐ取り組みを始めました。
- AIで価格やスペックを比較しやすくなるほど、作り手・製造現場・利用風景など「商品の周囲にある実体」も重要になります。
- 小規模事業でも、リアルな接点を写真・動画・記事としてECへ戻すことで、商品ページの信頼材料を増やせます。
どうも岩崎です。
ECっていうと、普通は「ネットで商品を売る場所」ですよね。
広告から商品ページへ来てもらって、商品の写真を見て、説明を読んで、レビューを確認して、カートに入れてもらう。なので今までは、「ECの中でどう売るか」を中心に考えることが多かったと思います。
ところが最近の楽天の動きを見ていると、ECの外にあるリアルな体験まで含めて設計する動きが面白くなってきています。
楽天市場が「街とネットを食でつなげる」イベントを始めた
楽天市場は2026年9月11日、オンラインとオフラインを連動させたグルメフェス「楽天食いしんぼう祭」を発表しました。
オンラインの特設ページには約220店舗が参加して、約16,000商品を紹介。一方、リアル会場には約40店舗が出店して、約400商品を販売します。大阪では9月18日から23日、東京では10月9日から12日に開催される予定です。 citeturn0search0
でも私が面白いと思ったのは、イベントの規模ではありません。
オンラインとオフラインが別々の企画になっていないところです。
特設ページでもリアル会場でも、商品を購入すると共通のスタンプが貯まります。スタンプ数に応じて楽天ポイントやオリジナルグッズがもらえるほか、オンラインで使えるクーポンも用意されています。つまり楽天側も、ネットとリアルを行ったり来たりする買い物体験として設計しているわけですね。 citeturn0search0
「広告→商品ページ→購入」だけで考えなくていい
これまでECの導線というと、こんな感じで考えることが多かったと思います。
広告 → 商品ページ → 購入
もちろん、これは今も重要です。でも実際のお客さんって、そんなに一直線に動くとは限らないんですよね。
イベントで商品を見て、ちょっと試して、その場では買わない。でも帰りの電車で検索する。Amazonや楽天のレビューを見る。公式サイトを確認する。それから数日後に買う。
逆にネットで商品を知ってから、イベントや店舗で実物を確認して、最後はECで購入することもあります。
つまり、
リアルで知る → 試す・体験する → ECで確認する → 購入する → 再購入する
という往復型の導線です。
実は楽天市場は2026年8月にも、くら寿司の実店舗で楽天市場の人気グルメ商品を販売し、店頭から各商品の楽天市場ページへつなぐ実証を始めています。リアル店舗で商品を体験して、その先をECにつなぐわけです。 citeturn0search4
AIで比較しやすくなるほど「商品の周囲」が重要になる
そして、ここにAIが入ってくるとさらに面白いと思っています。
商品名をAIに入れれば、価格やスペック、特徴などを整理して比較することはかなり簡単になってきました。楽天自身が2026年9月に発表したZ世代の調査でも、商品・サービスの検討や購入時に生成AIを利用する人は54.3%で、利用場面では「比較検討する商品を絞るとき」が最も多いという結果が出ています。 citeturn0search5
ということは、商品ページに書いてあるスペックや価格だけで差を作ろうとすると、比較されやすくなるんですよね。
そこで私は、商品の「周囲にある情報」が今まで以上に重要になると思っています。
- 誰が作っているのか
- どんな場所で作られているのか
- 実際にどう使われているのか
- どこで体験できるのか
- 専門家はどう評価しているのか
- 実際の購入者はどう使っているのか
こういう情報です。
価格表だけでは分からないし、スペック表だけでも分からない。でも「この商品、本当にちゃんと作られているんだな」と判断する材料にはなります。
「売っている商品」から「実在する商品」へ
例えば食品だったら、商品写真と説明文だけが並んでいるページと、作っている人の顔、製造している場所、試食イベントの様子、実際に食べている人の写真まで見えるページ。
同じ商品でも、受ける印象はかなり違いますよね。
私はこれを、「売っている商品」から「実在する商品」に変えると考えると分かりやすいと思っています。
もちろん、リアルな写真があれば必ず売れるという話ではありません。でもネットでは商品を直接触れないからこそ、商品や会社の実体を確認できる情報は、購入を判断する材料のひとつになります。
レビューも大事です。でもレビューだけで信頼を作る必要はないんですよね。
リアルイベントをやることが目的ではない
ここで「じゃあ、うちも楽天みたいなイベントを開催しなきゃ」と考える必要はありませんw
約220店舗を集めてイベントをやるなんて、小さな会社では普通できません。でも、今回の楽天の施策から使える考え方はそこじゃないと思うんですね。
すでに現実世界で起きていることを、ECへ戻す。
これなら小さな会社でもできます。
- 展示会に出たら、その様子を撮る
- 試飲・試食をしたら、お客さんが商品を手に取る様子を残す
- 工場へ行ったら、製造工程を撮る
- 開発者に会ったら、なぜ作ったのかを聞く
- 専門家に確認してもらったら、許可を得てコメントを掲載する
- 購入者から使用写真をもらったら、許可を得て紹介する
こういうことです。
わざわざ「コンテンツ制作の日」を作らなくても、普段の仕事の中にはECへ戻せる材料がけっこうあるんですよね。
撮影も「きれいな商品写真」だけでは足りなくなる
これは撮影の仕事にもそのまま当てはまると思っています。
商品撮影というと、どうしても商品単体をきれいに撮ることに集中します。もちろん、それは必要です。でもECで信頼まで伝えようと思ったら、商品だけでは足りない場合があります。
例えば撮影現場に開発者がいるなら、商品だけ撮って帰るのではなく、開発者が商品を確認している様子も撮っておく。工場へ行ったなら、完成品だけではなく製造工程も残しておく。展示会なら、ブースだけではなく実際に人が商品を試している場面も残す。
こういう写真って、その日のメインカットではないかもしれません。でも後から商品ページ、広告、SNS、会社紹介、AI検索向けの記事など、いろいろなところで使えるんですよね。
つまり撮影も、商品そのものを撮るだけではなく、商品が現実に存在している文脈まで記録するという考え方が必要になってくると思います。
リアルとECを別々に考えない
展示会は展示会。ECはEC。SNSはSNS。広告は広告。
こうやって分けてしまうと、せっかく現場で生まれた信頼材料がその場だけで終わってしまいます。
でも、
リアルな体験 → 写真・動画・コメント → EC → 広告・SNS → またリアルへ
と循環させれば、ひとつの体験を何度も使えます。
楽天の「食いしんぼう祭」も、オンラインと会場を共通スタンプでつなぐことで、リアルとECを別々の売り場として扱わない設計になっています。 citeturn0search0
小規模事業の場合、同じことを大規模にやる必要はありません。
現実世界で生まれた信頼を、ネットへ持ち帰る。
まずはそれだけでいいと思います。
今日、商品ページから「人間」を探してみる
ということで、今日は主力商品を1つだけ見てください。
そして商品ページを上から見ながら、ひとつだけ確認します。
「このページから、人間や現実の存在を感じられるか?」
例えば、次のうちどれか1つで構いません。
- 商品の開発者
- 製造現場
- 実際の使用風景
- 専門家
- 購入者
- 展示会やイベント
新しく大掛かりな撮影をする必要もありません。過去の写真や動画を探して、「これ、商品ページに使えるな」というものが1つあれば十分です。
リアルに存在している証拠を、1つだけECへ戻してみる。
AIで比較が簡単になるほど、こういう「実体」の積み重ねが面白くなってくると思います。
それでは!
よくある質問
-
ECサイトにリアルな体験を載せるメリットは何ですか?
-
商品写真やスペックだけでは分かりにくい、作り手、製造現場、使用状況などを伝えられます。購入者が商品や販売会社の実体を確認するための判断材料を増やせることがメリットです。
-
小規模なECでもリアルイベントを開催した方がいいですか?
-
必ずしもイベントを開催する必要はありません。展示会、試飲・試食、製造現場、開発者への取材、購入者の使用風景など、すでに存在するリアルな接点を写真や動画としてECへ戻すところから始められます。
-
商品ページには、どんなリアルな情報を追加すればいいですか?
-
商品の開発者、製造工程、実際の使用風景、展示会やイベント、専門家のコメント、許可を得た購入者の写真などが候補になります。まずは、その商品の信頼を判断するうえで役立つものを1つ追加してみるといいでしょう。
参考情報
- 楽天グループ:「楽天市場」、街とネットを食でつなげるグルメフェス「楽天食いしんぼう祭」を開催
- 楽天グループ:「楽天市場」、くら寿司と連携し、人気のグルメ商品をくら寿司で楽しめるコラボレーション企画の試験運用を開始
- 楽天グループ:Z世代における「生成AI利用に関する調査」結果
P.S.
商品ページを見直す時は、商品だけではなく「その商品を取り巻く人や現場が見えるか?」も確認してみてください。意外と使える写真が眠っていると思います。
