「全部得意」は伝わらない。強みをひとつに絞ると選ばれやすくなる理由

この記事の要点

  • 強みをたくさん並べるほど、一番伝えたい価値がぼやけることがあります。
  • 違いが伝わらなければ、お客さんは比較しやすい「価格」で選ぶしかなくなります。
  • まず一番自信のある商品やサービスをひとつ決め、「誰の、どんな困りごとを解決するのか」まで絞ることが大切です。

どうも岩崎です。

先日、あるお店の撮影に行ってきました。

現場に着いてセッティングをしていたら、オーナーさんが「これも撮ってください」「あ、これも入れてほしいです」と、次から次へと商品を持ってくるんですね。

気持ちはめちゃくちゃ分かります。せっかくお金を払ってプロを呼んでいるんだから、できるだけたくさん撮ってほしい。しかも、どれも自信のある商品なわけです。

で、試しに言われるまま全部をテーブルに並べて、背景に看板も入れて、スタッフさんにも入ってもらって、1枚に詰め込んでみました。

モニターで写真を見てもらったら、オーナーさんが黙ったんですね。

何のお店なのか、よく分からない写真になっていました。

撮った私が言うのもなんですが、「物がたくさんある」という情報しか残っていなかったんです。

これ、写真ではよく起きます。

伝えたいものを増やせば増やすほど、逆に何も伝わらなくなるんですね。

写真は「足し算」より「引き算」で強くなる

写真を撮る時、私がやっていることの多くは引き算です。

今日この1枚で何を伝えるのかを決める。その主題が決まったら、それ以外のものを画面から少しずつ外していきます。

商品を減らす。背景を整理する。余計な色を外す。光が当たる場所も絞る。

そうすると、残ったひとつが急に強く見えてきます。

面白いのは、何か新しいものを足したわけではないということです。

もともとそこにあったものから、余計なものを減らしただけなんですよね。

で、これって写真だけの話じゃありません。

お店や会社の「強み」の見せ方でも、まったく同じことが起きます。

「全部得意」は、結局何が得意なのか分からない

ホームページを見ると、いろいろな強みが並んでいる会社があります。

「丁寧な対応」「豊富な経験」「高い技術力」「アットホーム」「地域密着」「何でもご相談ください」

全部良いことですよね。

でも、お客さんからすると「で、この会社は結局何が一番得意なの?」となります。

しかも困ったことに、こういう言葉って、だいたい競合も同じことを言っています。

差を作るつもりで強みを増やしたのに、結果的には他社と同じに見えてしまうんですね。

写真に例えるなら、10個の商品を全部同じ明るさで並べて、「全部見てください」と言っている状態です。

人は、どこを見ればいいのか分からなくなります。

使える「10」を、何に集中させるか

例えば、ホームページのトップで伝えられる情報量を「10」だとします。

ラーメン専門店なら、その10を全部ラーメンのために使えます。麺の話、スープの話、素材の話、なぜこの味を作ったのかという話までできます。

ここまで読めば、「この人、相当ラーメンにこだわってるな」と思いますよね。

でも、ラーメンも定食も丼ものもカレーも全部同じように紹介しようとすると、それぞれに使える量は1とか2になります。

当然、一つひとつの説明は薄くなります。

つまり「いろいろできます」という情報は増えているのに、「この店を選ぶ理由」は逆に弱くなってしまうんです。

違いが分からなければ、最後は価格で比べられる

ここが一番怖いところです。

お客さんがホームページを見て、「へえ、いろいろやっているんだ」で終わったとします。

では、次に他のお店と何を比べるでしょうか。

明確な違いが分からなければ、一番比較しやすい数字を見ることになります。

つまり価格です。

「うちの良さは、実際に話してもらえば分かるんですけどね」という話もよく聞きます。

ただ、その「話すところ」まで来てもらうには、まずその前に選んでもらわなければいけません。

どれだけ良いところがあっても、最初の段階で伝わっていなければ、お客さんからすると比較材料にできないんですね。

だから私は、価値そのものと同じくらい「何を価値として見せるか」が大事だと思っています。

全部見せようとすると、自分自身もブレてくる

もう一つ問題があります。

「何でもできます」を続けていると、お客さんだけではなく、自分自身も何屋なのか分からなくなってくるんですね。

発信する内容が毎回変わる。サービスも増える。来るお客さんもバラバラになる。そのお客さん全部に合わせようとして、さらにサービスが増えていく。

こうなると、仕事は増えているのに、何か一つが積み上がっている感覚がなくなります。

これは結構しんどいです。

反対に「私たちはまず、これで選ばれる」とひとつ決めると、発信する内容も、見せる写真も、説明する言葉も揃ってきます。

見る側からしても、「ああ、この人はこれの人なんだ」と覚えやすくなるんですね。

絞ると、お客さんが減るように感じる

とはいえ、ここで怖くなるんですよね。

「一つに絞ったら、それ以外のお客さんが来なくなるんじゃないですか?」

この心配はすごく分かります。

でも、「何を一番強く見せるかを決めること」と、「それ以外の仕事を全部やめること」は別なんです。

ラーメンを一番強く見せたからといって、餃子を売ってはいけないわけではありません。

商品撮影を一番の強みにしたからといって、人物を撮ってはいけないわけでもない。

入口をひとつ分かりやすくするんです。

入口が10個ある店より、「まずここから入ってください」と分かる店の方が、お客さんは入りやすいですよね。

一番の商品だけに絞ったら「この店らしさ」が出た

最初に話した撮影も、結局オーナーさんと相談して、一番自信のある商品ひとつに絞って撮り直しました。

背景も整理して、その商品以外は外す。そして、その1点が一番魅力的に見えるように光を作りました。

出来上がった写真を見たオーナーさんが、

「これ、うちの店っぽい」

と言ったんですね。

さっきまでたくさんの商品を写していた時より、一つしか写っていない写真の方が、店全体の雰囲気まで伝わったんです。

これって面白いですよね。

全部を説明しなくても、一つのものをきちんと見せることで、見る人がその先まで想像してくれることがあります。

一つの商品へのこだわりが伝われば、「他の商品もちゃんと作っていそうだな」と思ってもらえるかもしれない。

つまり、一つに絞ることは、店全体を小さく見せることではありません。

店全体の価値を理解してもらうための、入口を作ることなんです。

まず「一番自信があるもの」をひとつ選ぶ

では、何を絞ればいいのか。

まず、自分の商品やサービスの中から「一番自信があるもの」をひとつ選んでみてください。

ここでは、単純に一番売れているものじゃなくてもいいと思います。

「これは他よりちゃんと説明できる」「これなら誰にも負けたくない」「この仕事をもっと増やしたい」と思えるものです。

そして、その商品について、

「誰の、どんな困りごとを解決するものなのか」

を一行で書いてみてください。

ここがスラスラ書けないなら、まだ少し広すぎるかもしれません。

例えば「すべての人におすすめです」では、誰にも自分のことだと思ってもらえません。

でも「○○で困っている人のための商品です」まで言えれば、その人には急に自分事になります。

削ることは、捨てることではない

絞る作業って、最初は怖いです。

せっかく持っている強みを捨てるように感じますからね。

写真でも同じです。

「これも入れたい」「せっかくだからこれも見せたい」と思いながら、私は画面からいろいろなものを外します。

でも、外したものに価値がないわけではありません。

今回の1枚では主役ではないというだけです。

商品やサービスも同じです。

一番強く伝えるものをひとつ決めても、他の商品を捨てる必要はありません。

全部を同じ強さで叫ぶのをやめるだけです。

何を一番最初に見てほしいのか。

そこを決めるだけで、見せ方はずいぶん変わります。

「何が得意ですか?」に一言で答えられるか

最後に一つだけ確認してみてください。

初めて会った人から、

「どんな仕事が得意なんですか?」

と聞かれた時、何と答えるでしょうか。

そこで「えーと、これもできますし、あれもできますし……」となってしまうなら、まだ少し散らかっているのかもしれません。

写真なら、撮る前に主題を決めます。

商売でも、まず何で選ばれたいのかを決める。

全部を伝えようとするのではなく、一番伝えたいことを一番強く伝える。

その方が、結果的には他の良さまで伝わりやすくなると思っています。

それでは!

よくある質問

強みをひとつに絞ると、他の仕事が来なくなりませんか?

「一番強く見せるものを決めること」と「それ以外をやめること」は別です。入口として一つの強みを明確にし、その後で関連する商品やサービスを知ってもらえば構いません。最初から全部を同じ強さで伝えないことが大切です。

何を自分の強みにすればいいか分かりません。

まず「一番自信を持って説明できるもの」「もっと増やしたい仕事」「お客さんから評価されることが多いもの」を書き出してみてください。その中から、誰のどんな困りごとを解決するのかまで具体的に説明できるものを優先すると整理しやすくなります。

「何でもできます」と伝えるのは良くないのでしょうか?

対応範囲が広いこと自体は強みになります。ただ、最初の段階からすべてを並べると、一番の特徴が見えにくくなることがあります。まず「何を一番得意としているのか」を伝え、その後で対応範囲の広さを見せる方が理解してもらいやすくなります。

P.S.

写真を撮る時、私がたまにやる確認方法があります。ファインダーを覗きながら、「今、何を撮っているのか」を一言で言ってみるんです。

「このケーキのつやを撮っている」とすぐ言えるなら、主題はかなり明確です。でも「店の雰囲気と商品と、あと全体的な感じを……」となったら、撮る前から少し散らかっています。

これ、スマホでもできます。撮る前に「今日は何を見せたいんだろう」と一度考えるだけで、余計なものを画面から外しやすくなります。商売の強みも、たぶん同じなんですよね。

いわさきじゅん

1998年に広告制作会社で写真が始まり、アートイベント会社の広報として活動していました。まだあまりウェブマーケティングが普及していない2006年からSEO(検索エンジン対策)・リスティング広告(PPC広告)・LPO(ホームページ対策)・コピーライティングなど、サポートをしています。