選ばれる理由がないと、最後は価格で比べられる。「この人に頼みたい」を作る方法

この記事の要点

  • 商品やサービスの違いが伝わらなければ、お客さんは比較しやすい「価格」を判断材料にしやすくなります。
  • 選ばれる理由になるのは、機能だけではなく「なぜこの仕事をするのか」「何にこだわるのか」という背景です。
  • ただし自分語りでは意味がありません。こだわりを「だから、お客さんにこんな良いことがある」まで翻訳することが大切です。

どうも岩崎です。

撮影の仕事をしていると、たまに面白いことが起こります。

以前、ある職人さんのプロフィール写真を撮った時の話です。

最初は「きれいに撮ってほしい」ということだったので、白い壁の前に立ってもらって、きちんと光を作って撮りました。いわゆる証明写真を、かなりちゃんと撮ったような写真です。

悪くはないんですよ。ちゃんと写っているし、光もきれいです。

でも、なんか物足りない。

そこで場所を変えて、もう1枚撮らせてもらいました。今度は、普段使っている道具が並んだ作業台の前です。

服も同じ。表情も同じ。こちらからの指示もほとんど変えていません。

変えたのは、背景だけです。

ところが2枚を並べてみると、別人みたいに見えたんですね。

白い壁の写真は、「きれいに写っている、どこかの誰か」に見える。

でも作業台の前で撮った写真は、「この仕事を長くやってきた人」に見えるんです。

同じ人なのに、伝わってくる情報がまったく違う。

これ、今日の話にものすごく関係しています。

人は商品だけではなく「背景」まで見ている

写真って、被写体だけを見られているわけじゃないんですよね。

人は背景も見ています。何が置いてあるのか。道具がどれくらい使い込まれているのか。整然としているのか。雑然としているのか。

そこから勝手に、その人の仕事や人生まで想像します。

だから私は人物を撮る時、背景を「ただ後ろにあるもの」とは考えていません。

どこで撮るかを決めることは、その人をどう見せるかを決めることでもあります。

で、商売でもまったく同じことが起きています。

お客さんが見ているのは、商品やサービスのスペックだけではありません。

なぜこの仕事をしているのか。何にこだわっているのか。なぜこのやり方なのか。何を大切にしているのか。

そういう背景まで含めて、「この人にお願いしたい」と判断しています。

選ばれる理由がなければ、価格が比較基準になる

例えば、同じようなサービスを提供している会社が3社あったとします。

どこも「高品質です」「丁寧に対応します」「実績豊富です」と書いている。

では、お客さんは何を基準に選べばいいでしょうか。

違いが分からないですよね。

違いが分からないと、人は比較しやすいものを見るようになります。

一番分かりやすいのが、価格です。

3万円、5万円、8万円。

違いが説明されていないなら、「じゃあ3万円でいいか」となるのは自然です。

つまり価格競争って、安い会社がいるから始まるだけじゃないんです。

価格以外に比べる理由をこちらが用意できていないから、価格で比べられてしまう場合もあります。

これはかなり大きな違いだと思っています。

技術や品質だけでは、違いを作りにくくなっている

昔なら、技術そのものが大きな差になった業界もたくさんありました。

良い設備を持っている。専門知識がある。きれいなデザインが作れる。文章が書ける。

もちろん今でも全部大事です。

ただ、それだけでは違いを説明しづらくなっています。

設備は買えます。技術も学べます。良いやり方が出れば競合も真似します。さらにAIを使えば、それなりに整った文章や画像を作るハードルもかなり下がりました。

そうなると、「何ができるか」だけでは似た人がどんどん増えてきます。

そこで差になるのが、「なぜそれをやるのか」「どういう考えでやっているのか」という部分です。

技術は似せられても、その人が積み重ねてきた経験や考え方まで完全に同じにはできませんからね。

私はこれをMSPとして考えています

私は、この「背景」の部分をMSPとして考えています。

簡単に言えば、商品そのものの機能だけではなく、自分の世界観や理念、こだわりまで含めて「選ぶ理由」にするという考え方です。

ただし、ここで一つ大きな注意点があります。

MSPは、ただ自分の話をすればいいわけではありません。

ここを間違えると、ものすごく長いプロフィールを書いたのに、誰にも読まれないということが起きます。

「モノよりヒト」は、自分語りを増やすことではない

「これからは人で選ばれる時代です」と言うと、自分の趣味や性格、プライベートの話をたくさん書き始める人がいます。

でも、それだけではお客さんにとって選ぶ理由にはなりません。

例えばラーメン屋さんが、

「ラーメンが好きすぎて、休日もずっとスープのことを考えています」

と言ったら、これはちょっと興味が湧きますよね。

「そこまでやっているなら食べてみたい」と思うかもしれません。

でも、

「人と話すのが好きです。休日は家族と出かけます。明るい性格です」

だけだと、ラーメンを食べる理由にはなりにくい。

その人をすでに好きなら興味を持つかもしれません。でも、初めて店を探している人にとっては、まだそこまで重要ではないんですよね。

順番が逆なんです。

まず本業に関係するところで興味を持ってもらう。

そのあとに、「この人ってどんな人なんだろう」と個人にも興味を持ってもらう。

私はこの順番が大事だと思っています。

こだわりは、お客さんのメリットに翻訳する

では、自分のこだわりをどう伝えればいいのか。

ポイントは、「だから、お客さんに何が良いのか」までつなげることです。

例えば、

「うちは撮影前の打ち合わせに時間をかけます」

だけなら、こちら側の話です。

でも、

「撮影前の打ち合わせに時間をかけるので、当日になって『思っていた写真と違う』というズレを減らせます」

まで言えば、お客さんのメリットになります。

「手作業で一つずつ確認しています」も同じです。

それだけなら「大変ですね」で終わります。

でも、「一つずつ確認するので、○○のミスが起こりにくい」と言えば、初めて自分に関係する話になります。

こだわりを語るだけではなく、こだわりの先にある価値まで見せるんですね。

職人さんの作業台を背景に選んだ理由

最初に話した職人さんの写真も同じです。

私が作業台を背景に選んだのは、単純に「職人っぽくてカッコいいから」ではありません。

お客さんがその人を見た時に、「この人は本当にこの仕事を長くやってきた人なんだ」と感じられる情報がそこにあったからです。

使い込まれた道具。

手を動かしてきた痕跡。

日常的に仕事をしている場所。

それらが背景に入ることで、本人が「私は経験豊富です」と言わなくても、写真を見る人が勝手に感じてくれる。

私はこういうのが、すごく大事だと思っています。

価値って、自分で「価値があります」と言えば伝わるわけじゃありません。

見る側が「なるほど、だからこの人に頼みたいんだ」と感じられる前提を作って、初めて価値になります。

価格勝負を選ぶと、その後の仕事まで変わる

価格でしか違いを作れない状態が続くと、単に利益が減るだけではありません。

安くしないと選ばれない。だから数をこなす。数をこなすから時間がなくなる。時間がなくなるから、一件一件へかけられる手間も減っていく。

そして、さらに価格以外の価値を作りにくくなる。

こういう循環に入ると結構しんどいんですよね。

しかも「この人だからお願いしたい」というお客さんより、「一番安かったから来ました」というお客さんが増えます。

もちろん価格を重視するお客さんが悪いわけではありません。

こちらが価格以外の判断材料をほとんど見せていないなら、価格を見るしかないですから。

だから私は、値段をどうするかより先に、「なぜ自分を選ぶのか」を作る方が大事だと思っています。

自分だけが「ついやってしまうこと」を探す

では、選ばれる理由をどう見つければいいのか。

まず、自分の仕事の中で、他の人はそこまでやらないのに、自分はどうしてもやってしまうことを一つ探してみてください。

面倒なのに毎回やってしまう。

別にやらなくても納品できるのに、気になってやってしまう。

周りから「そこまでやるんですか?」と言われる。

こういうところには、その人らしいこだわりが隠れていることがあります。

それを一つ書き出したら、次に、

「だから、お客さんにどんな良いことがあるのか?」

を考えてみてください。

ここまで書けて、初めて「こだわり」が「選ぶ理由」に変わります。

持っている価値より、伝わっている価値

良い商品を作っている。

良い仕事をしている。

人より手間もかけている。

それでも選ばれないことはあります。

なぜかというと、お客さんにはその違いが見えていないからです。

自分の中に価値があることと、相手に価値として認識されていることは別なんですよね。

写真でも同じです。

職人さんが何十年仕事をしてきたとしても、白い壁の前で普通に撮れば、その年月は写真には写りません。

でも背景を少し変えるだけで、それまで目に見えなかった経験まで伝わるようになる。

私が写真でやっているのは、そういう目に見えないものを実体化することです。

商売でも同じで、持っている価値を、そのまま頭の中に置いておいても伝わりません。

言葉や写真や見せ方を使って、「なぜあなたなのか」が分かる状態にしておく必要があります。

それができると、価格は比較材料の一つにはなっても、唯一の比較材料ではなくなります。

まずは、自分が仕事で「そこまでやる?」と言われることを一つ探してみてください。

その理由の中に、選ばれる理由が隠れているかもしれません。

それでは!

よくある質問

価格競争を避けるには、値上げすればいいのでしょうか?

値上げするだけでは価格競争から抜けられません。「なぜ他ではなく自分を選ぶのか」が伝わっていなければ、今度は単に「高い会社」に見える可能性があります。まず価格以外の違いを、お客さんが理解できる形で伝えることが先です。

自分の「選ばれる理由」が分かりません。

他の人はそこまでやらないのに、自分はついやってしまうことから探してみてください。手間をかけている工程、仕事で譲れない部分、お客さんからよく褒められることなどを書き出し、それが「だから、お客さんにどんな良いことがあるのか」までつながるかを確認します。

理念やこだわりを書けば、人で選んでもらえますか?

書くだけでは十分ではありません。理念やこだわりが本業とつながり、さらにお客さんのメリットまで説明されていることが大切です。自分の趣味や性格をたくさん書くより、「この考え方だから、こういう仕事をして、あなたにはこういう価値がある」という流れにすると伝わりやすくなります。

P.S.

スマホで人や商品を撮る時、多くの人は中央の被写体だけを見ています。だから後から見て、「うわ、後ろに段ボールが写ってる」となるんですよね。

なので撮る前に、一度だけ画面の四隅を見てみてください。余計なものがあったら、対処はだいたい3つです。物を動かす、自分が少し動く、寄って画面から外す。

特に「自分が少し動く」は簡単なのに、意外とやらないんです。背景が変わると、同じ人、同じ商品でも意味まで変わります。今日の商売の話とまったく同じで、何を見せるかだけじゃなく、何と一緒に見せるかも大事なんですよね。

いわさきじゅん

1998年に広告制作会社で写真が始まり、アートイベント会社の広報として活動していました。まだあまりウェブマーケティングが普及していない2006年からSEO(検索エンジン対策)・リスティング広告(PPC広告)・LPO(ホームページ対策)・コピーライティングなど、サポートをしています。