2023年、群馬大学と慶應義塾大学、高知工科大学の共同研究チームが、色と言葉の情報の矛盾に関する画期的な研究成果を発表しました。この研究は、私たちが日常的に体験する「ストループ効果」と呼ばれる現象の脳内メカニズムを解明するもので、脳科学、心理学、そして言語学など、多岐にわたる分野に大きな影響を与える可能性を秘めています。
ストループ効果とは?なぜ重要なのか?
ストループ効果とは、「青」という文字が赤色で書かれているなど、文字の色と意味が矛盾する情報を同時に目にした際に、色の判断が遅れる現象です。この現象は、1935年にアメリカの心理学者J.R.ストループによって報告されて以来、多くの研究者の関心を集めてきました。
ストループ効果の研究が重要な理由は、以下の点が挙げられます。
- 脳の情報処理メカニズムの解明に貢献する: ストループ効果は、脳が視覚情報と意味情報をどのように統合し、競合を解決しているのかを理解する上で貴重な手がかりとなります。
- 注意と抑制機能の理解を深める: ストループ効果は、注意の切り替えや不要な情報の抑制といった、高次な認知機能のメカニズムを解明する上で重要な役割を果たします。
- 学習障害や発達障害の理解と支援に役立つ: ストループ効果は、学習障害や発達障害を持つ人々において、情報処理の困難さを評価するためのツールとしても活用されています。
- 日常生活における情報処理の理解を深める: ストループ効果は、広告や標識など、日常生活で目にする様々な情報が、私たちの認知や行動にどのように影響を与えるかを理解する上でも役立ちます。
研究成果:前頭前野と小脳の連携が鍵
今回の研究では、機能的MRI(fMRI)を用いて、ストループ効果が生じる際の脳活動を詳細に計測しました。その結果、ストループ効果は、色がついた単語を知覚する段階で生じ、その解消には、大脳の前頭前野と小脳が連携した神経回路(前頭・小脳ループ)が重要な役割を果たすことが明らかになりました。
特に、従来、運動制御の中枢と考えられてきた小脳が、言語処理や認知制御といった高次な機能にも関与しているという発見は、脳科学における新たな知見として注目されています。
今後の展望
この研究成果は、ストループ効果の神経メカニズムを解明する上で大きな一歩となりました。今後、この知見を基に、注意や抑制機能の向上、学習障害や発達障害の支援、さらには、より効果的な情報伝達方法の開発など、様々な分野への応用が期待されます。
ストループ効果を直接的に利用した写真やクリエイティブの例は、以下のようなものが考えられます。
写真
- 文字と色の不一致: 例えば、「赤」という文字を青色で表示する、または「STOP」という文字を緑色で表示するなど、文字の意味と色が矛盾する写真を撮影する。
- 二重露光: 文字と風景写真を二重露光し、文字が風景に溶け込むようにすることで、文字の意味と視覚的な印象が不一致する効果を生み出す。
クリエイティブ
- 広告: 商品名やキャッチコピーを、背景色や他の要素と矛盾する色で表示することで、消費者の注意を引きつけ、記憶に残る広告を作成する。
- ロゴデザイン: 企業名やブランド名を、予想外の配色でデザインすることで、ユニークで印象的なロゴを作成する。
- アート: 絵画や彫刻などの作品において、色と形の組み合わせを意図的に矛盾させることで、見る人に違和感や驚きを与える作品を制作する。
- webデザイン: webサイトのボタンやリンクを、一般的な色とは異なる色で表示することで、ユーザーの注意を引きつけ、クリック率を向上させる。
これらの例は、ストループ効果を視覚的に表現し、見る人の注意を引きつけたり、記憶に残るような効果を生み出すことを目的としています。ただし、ストループ効果は認知的な負荷を高める可能性もあるため、使いすぎには注意が必要です。
参考
The Stroop effect involves an excitatory–inhibitory fronto-cerebellar loop
この研究では、Stroop効果における言語処理の役割を調査し、左前頭前野と右小脳が関与していることが示されました。この効果は、前頭小脳ループによって解決され、前頭から小脳への興奮性シグナルと逆に小脳から前頭への抑制性シグナルが関与しています。これらの結果は、Stroop効果が言語処理に関連しており、前頭小脳ループが目標関連情報を調整している可能性を示唆しています。
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