この記事の結論
- 孫子の「百戦百勝は 善の善なる者に非ざるなり」は、勝つこと自体よりも「どれだけ損耗せずにいられるか」を重視しなさいというメッセージだと読めます。
- 仕事やビジネスで勝ち続けようとすると、時間・体力・お金・人間関係などの見えないコストがじわじわ削られていきます。
- 大事なのは、毎回勝つことではなく「負けない形」「消耗しない構造」をつくることで、本当に残したいものを守ることだ、というのが今回のテーマです。
どうも岩崎です。
きょうは孫子の中でも、少しひねった一文を取り上げます。
百戦百勝は 善の善なる者に非ざるなり
ざっくり言えば「百回戦って百回勝つことは、最高のやり方ではない」という話です。普通に考えれば、連戦連勝こそ理想に思えますが、孫子はそれをわざわざ否定している。この違和感が、仕事やビジネスを考える上でけっこう大事だなと感じています。

勝ち続けることが目的になると、視野が狭くなる
まず、この一文を現代の言葉に置き換えると「毎回勝つことはすごいけれど、それを目標にしてしまうと大事なものを失うよ」というニュアンスだと思っています。勝つことが目的になると、その瞬間の勝敗だけに意識が集中します。
例えば、こんな状態です。
- 前回より売上を上回ることだけを目標にして、無理な値引きやキャンペーンを重ねてしまう。
- SNSの数字を伸ばすために、本当に届けたい層ではなく、反応しやすい人にばかり向けて発信してしまう。
- 打ち合わせや交渉で「自分が正しい」と証明することがゴールになってしまい、関係性が削れていく。
この時点では、一見勝っているように見えます。数値も上がっているし、その場の議論でも押し切れている。ただ、その裏側では、利益率や信頼、時間といった目に見えにくい資産が少しずつ削られていきます。
疲弊するビジネスと、摩耗する人間関係
私自身、昔は「とにかく勝ち続けること」にこだわっていた時期がありました。毎回のプロジェクトで成果を出すこと、提案で負けないこと、数字で証明すること。もちろん、それ自体は大事です。
ただ、あるタイミングで気づいたのは、勝ちを積み上げるたびに、どこかで疲れがたまっていっている感覚でした。
- 売上は伸びているのに、作業量だけが増えて時間に余白がなくなる。
- 短期的な結果に合わせて方針を変え続けるので、ブランドの軸がぶれやすくなる。
- 交渉で勝ち続けた結果、相手との関係性がぎくしゃくしていく。
勝負に勝っているのに、トータルでは消耗している。これは、目先の勝利を取りに行きすぎた結果だと思います。孫子が「百戦百勝は最高ではない」と言った背景には、こうした消耗戦への危機感があったのではないかと感じます。
本当に残したいものは何か、から逆算する
では、何を目安にして戦い方を決めれば良いのか。ここで一度、「本当に残したいものは何か」を整理しておく必要があります。
例えば、こんな視点です。
- 自分やチームの健康や時間。無理がきく期間は思っているより短い。
- お客さんとの信頼関係。一度削れると取り戻すのにかなり時間がかかる。
- ブランドの世界観や中心軸。ここが崩れると、何をやっても薄くなる。
- 家族や身近な人との関係。仕事の勝ち負けよりも長く続くもの。
これらを犠牲にしてまで取りに行く勝負なのかどうか。ここを先に決めておくと、「勝っているのにどんどん苦しくなる」という状態を避けやすくなります。孫子が重視しているのは、きっとこちら側です。
勝利よりも「損耗しない構造」をつくる
では、具体的にどうすれば損耗を減らせるのか。私は、次のようなことを意識しています。
- 一回きりのキャンペーンではなく、長く使える仕組みや導線を優先する。
- 「毎回新規で勝負」ではなく、既存のお客さんと関係を深める設計を入れておく。
- 短期の売上目標だけでなく、3か月後や半年後にどうなっていたいかも一緒に決める。
- 自分が消耗しやすいパターンを把握して、そこに依存しすぎないようにする。
例えば、広告で言えば、その場のクリック単価やCPAだけではなく、「この導線は、こちらが無理をし続けなくても回り続ける形になっているか」を見るイメージです。セールで一時的に数字を跳ねさせるのは簡単ですが、その後の反動やお客さんの期待値をどう扱うかまで含めて考えないと、結局は自分の首をしめてしまいます。
明日は「戦わずして勝つ」というテーマから、そもそもぶつからない形で目的を達成する考え方について整理してみます。
ではまた。
P.S.
昔、家族でボードゲームをしたときに、つい本気を出しすぎて全勝してしまったことがあります。
こちらとしては「大人として手を抜かずに向き合ったつもり」だったのですが、終わったあとの感想は「なんか疲れた」「もうそのゲームはいいかな」でした。勝ったのはこちらなのに、空気としては完全に負けです。
あれ以来、ボードゲームでは最初から勝ちに行かず、「みんなで笑って終われるかどうか」をゴールにするようにしました。孫子が見たら「最初からそうしなさい」と言われそうですが、身をもって学ぶタイプなので、いつも少し遅れて気づきます。
いわさき写真教室をもっと見る
購読すると最新の投稿がメールで送信されます。
