認知症は、近年高齢化社会の進展と共に大きな社会問題となっています。
しかし、現時点では根本的な治療法は確立されておらず、多くの患者さんやご家族が不安を抱えているのではないでしょうか。
そんな中、近年注目を集めているのが「トラベルセラピー」です。
トラベルセラピーとは、旅行を治療の一環として取り入れることで、認知症の症状を改善したり、進行を遅らせたりする効果が期待できる療法です。

旅行が認知症に効果的な理由は、主に以下の3つが挙げられます。
脳を活性化する様々な刺激
旅行は、観光、社交活動、モビリティの向上など、普段とは異なる環境で過ごすことで、脳に様々な刺激を与えます。
この刺激が、脳の神経細胞の活性化を促進し、認知機能の低下を防ぐ効果が期待できます。
具体的には、
- 新しい場所や景色を見る
- 人と会話したり、食事をしたりする
- 歩く、階段を登るなどの運動をする
といった行動が、脳の血流を促進し、神経細胞の新しい結合を促します。
ストレス解消と気分転換
認知症患者さんは、進行に伴い不安や抑うつなどの精神症状を伴うことが少なくありません。
旅行は、普段の生活から離れ、新たな環境で過ごすことで、ストレスを解消し、気分をリフレッシュする効果があります。
気分転換によって、精神的な安定が図られ、認知機能の維持にも繋がると考えられています。
社会との繋がりの維持
認知症が進行すると、外出や人と関わる機会が減り、社会から孤立してしまうことがあります。
旅行は、家族や友人と一緒に出かけたり、現地の人々と交流したりすることで、社会との繋がりを維持することができます。
社会との繋がりの維持は、認知症の進行を抑制し、QOL(生活の質)の向上にも効果があるとされています。
2022年に発表されたオーストラリアのエディスコーワン大学の研究では、旅行が認知症患者の感情、気分、思考、記憶などの様々な認知機能に刺激を与え、医療専門家が推奨する典型的な治療計画に似た経験を提供することが明らかになりました。
この研究結果は、旅行が従来の薬物療法と併用することで、認知症の非薬物療法の質を高める可能性を示唆しています。
旅行は、単なる休暇としてではなく、認知症やメンタルヘルスなどの治療法としての役割も期待できるというわけです。
今後、さらに詳細な研究とデータ収集が必要ではありますが、トラベルセラピーは、認知症患者さんのQOL向上に大きく貢献できる可能性を秘めた療法と言えるでしょう。
参考:「旅行療法」: 休暇は精神的健康と幸福に役立つでしょうか
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