正論なのに伝わらないを抜け出す方法 直感システム1と論理システム2を味方にするストーリー設計

この記事の結論

  • 人はまずシステム1(直感)でほとんどを判断し、そのあとにシステム2(論理)が理由を後付けしている。
  • どれだけ正しい説明をしても、最初の直感が「なんか違う」と感じていたら、行動までは変わりにくい。
  • だからこそ、ストーリーでシステム1を動かし「いいかも」と感じてもらい、そのあとシステム2が納得できる構造を置く設計が大事になる。

どうも岩崎です。

以前に「ストーリーは読みやすさと分かりやすさを同時に上げてくれる」、「没頭と臨場感を生み出す」という話をしました。

今日は、ダニエル・カーネマンのファスト&スローで有名な、システム1とシステム2の考え方を、できるだけ噛み砕いてストーリーと結びつけてみます。

システム1とシステム2をざっくり言うと

難しい理論の話を全部やるとそれだけで一冊分になるので、ここではかなりラフに分けてしまいます。

  • システム1 直感・感覚・一瞬で浮かぶイメージ。自動でサッと判断してくれるモード。
  • システム2 よく考える・比較する・検討する。時間とエネルギーを使ってじっくり判断するモード。

イメージしやすいように、表にしておきます。

特徴システム1(直感)システム2(論理)
速さ速い(無意識・自動的に働く)遅い(意識してじっくり考える)
役割好き嫌い、安心か警戒かを一瞬で決めるなぜそうするのかを言葉で説明し、比較検討する
ストーリーへの反応映像や感情にそのまま反応して、自分ごととして感じる構造や一貫性があるかをチェックし、納得できるかを判断する

例えば、誰かのランディングページを開いた瞬間、まだ一行も読んでいないのに「なんか好き」「なんか苦手」と感じることがありますよね。

これはシステム1が一瞬で判断した結果です。そのあとに「構成は分かりやすいか」「料金は妥当か」「自分には必要かどうか」を考え始めるのがシステム2です。

ここでポイントなのは、ほとんどの場面で先に動いているのはシステム1だということです。第一印象で「なんか違うな」と感じてしまうと、そのあとにどれだけ丁寧に説明しても、頭では理解しつつ心は動きにくい。

逆に、最初の直感で「ちょっと気になる」「いいかも」と感じてもらえれば、そのあとに多少むずかしい説明が続いても、読み飛ばさずに付き合ってくれます。

論理は直感をひっくり返しにくい

ここでよく起きる勘違いが、「正論をきちんと伝えれば、分かってもらえるはず」というものです。もちろん論理は大事です。ただ、システム1がすでに「いやだな」「怪しいな」と感じてしまっている状態を、システム2の説明だけでひっくり返すのは結構むずかしい、という現実があります。

営業の電話をイメージすると分かりやすいです。

最初の一声を聞いた瞬間に「あ、営業だな」と感じたら、その後どれだけメリットを並べられても、心の中では「どうやって断ろうか」を考えていたりしますよね。これはもう、システム1が警戒モードに入ってしまっている状態です。

逆に、信頼している友人から「これ、すごく良かったよ」と勧められたものは、細かく説明されなくても一度試してみようかなと思いやすい。ここでは、友人との関係や、その人のふだんの振る舞いも含めて、システム1の中に信頼のストーリーがすでに出来上がっているからです。

こう考えると、「正しいことを論理的に伝える」だけでは届かない理由が見えてきます。最初に働くのはいつも直感側なので、そこにちゃんと味方になってもらわないと、どれだけ資料を作り込んでももったいない、ということですね。

ストーリーはシステム1への入口になる

では、どうやってシステム1に味方になってもらうのか。そこで強いのがストーリーです。ストーリーには次のような性質があります。

  • 登場人物の感情に、つい自分を重ねてしまう。
  • 状況やディテールが入ると、脳の中で勝手に映像が再生される。
  • どうなるのか続きが気になって、先を読みたくなる。

これらは全部、システム1が自動的にやってくれる処理です。こちらが意識して「今から直感に働きかけます」と宣言しなくても、ストーリーを読んだ瞬間に静かに起きています。

私がよくやるのは、いきなりサービスの説明に入るのではなく、最初に短いストーリーを一つ置くことです。例えば、昔の自分がどんなふうに悩んでいたか、あるクライアントさんがどんな壁にぶつかっていたか、日常の中で「このままではまずいな」と感じた瞬間などです。

ここで大事なのは、最初からきれいな話にしすぎないことだと思っています。少しダサかったり、恥ずかしかったり、モヤモヤしていたり。そういう人間くさい部分が入っているほど、読み手のシステム1は「分かる」「自分もそうかも」と感じやすい。そこで「この人の話なら、もう少し聞いてみてもいいかも」という入口が開きます。

システム2は「納得の言い訳」を作ってくれる

ここまで読むと「直感がそんなに大事なら、論理はいらないのでは?」と感じる方もいるかもしれません。でも、もちろんシステム2もめちゃくちゃ重要です。

私がしっくりきている捉え方は、システム2は「納得の言い訳」を作ってくれる役割だということです。例えば何かを買うとき、多くの場合は先にシステム1が「なんか好き」「これにしよう」と決めています。そのあとでシステム2が、「機能も十分だし、値段も妥当だし、仕事にも役立つし」と、後から理由を整えてくれる。

この二つがそろったとき、人は迷いなく行動できます。「なんとなく良い気がする」という直感だけだと、どこかで罪悪感が残るし、「理屈は正しいけれど、なんかイヤ」という状態だと、ブレーキがかかったままです。

だからこそ、文章の設計としては、次の順番を意識します。

  • ストーリーでシステム1に「いいかも」と感じてもらう。
  • そのあとに、システム2が納得できる構造や理由を示す。

このセットでようやく、読み手の中に「感覚としても良いし、説明してと言われても理由を言える」という状態が生まれます。私はこれを、ストーリーで入口を開き、論理で背中を押す、というイメージで捉えています。

ストーリーと論理をどんな順番で並べるか

実際の文章では、例えばサービス紹介ならこんな流れにすることが多いです。

  • きっかけのストーリー(なぜこのサービスを作ろうと思ったのか)。
  • 共通する悩みのストーリー(読み手が自分を重ねやすい場面)。
  • そこから見えてきた「本当に必要だったこと」の気づき。
  • その気づきに沿って設計したサービスの全体像(構造やステップ)。
  • そのサービスを受けた人がどう変化していったのかのストーリー。

この並びにすると、「ストーリー → 構造 → ストーリー」と、システム1とシステム2に順番にバトンを渡していくような形になります。どこか一箇所だけで説得しようとするのではなく、「直感で共感」「論理で納得」「もう一度ストーリーで自分ごと化」とリズムをつけるイメージです。

明日は、ストーリーと記憶の話に進みます。人の記憶がなぜストーリー構造になっているのか、そして「ピーク」と「終わり」だけが強く残るという現象を、文章や導線設計にどう活かすかを掘っていきます。

ではまた。

P.S.

ここまでシステム1とシステム2の話を書いておいて何ですが、私のシステム1はコンビニのレジ前に並ぶと、かなりの確率で余計なお菓子をカゴに入れようとしてきます。システム2は「カロリー」「健康」「晩ご飯前だよ」と必死に理由を並べてくるのですが、たいていレジにたどり着く前に負けてます。


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いわさきじゅん

1998年に広告制作会社で写真が始まり、アートイベント会社の広報として活動していました。まだあまりウェブマーケティングが普及していない2006年からSEO(検索エンジン対策)・リスティング広告(PPC広告)・LPO(ホームページ対策)・コピーライティングなど、サポートをしています。