この記事の結論
- 人は体験全体ではなく「山場」と「終わり」の印象で、その出来事を良かったかどうか判断しやすい。
- ストーリーや導線の中で「どこを山場にするか」「どんな終わり方にするか」を意図的に決めるだけで、同じ内容でも記憶と印象が大きく変わる。
- メルマガやブログ、講座、サービス提供でも「ピーク」と「最後の数分」を意識して設計しておくと、覚えていてもらえる確率とリピートにつながる確率が上がる。
どうも岩崎です。
これまで、ストーリーの読みやすさ、没頭と臨場感、直感と論理、そして記憶の話をしてきました。今日は、その記憶の話をもう一歩だけ先に進めて「人はピークと終わりしかほとんど覚えていない」という少しシビアな話をしてみます。
脳の仕組みをものすごくラフに言ってしまうと、私たちは体験のすべてを細かく保存しているわけではなく「一番強く感情が動いた山場」と「最後どう終わったか」の二つを中心にざっくり圧縮して持ち歩いています。なので、こちらがどれだけ丁寧に全体を設計しても、山場と終わり方の印象がイマイチだと「なんか普通だったな」で終わってしまいやすいわけです。

体験は細部よりも「山場」と「終わり」で判断される
例えば、ライブや舞台を思い出してみてください。開演から終演まで全部を細かく覚えていることは少なくて「途中のあの一曲で鳥肌が立った」とか「最後のあいさつで一気に泣きそうになった」とか、感情が大きく揺れた瞬間と、ラストの空気感だけが妙に鮮明に残っていたりします。
旅行でも同じです。移動時間や細かいスケジュールは忘れてしまっても「突然の夕立のあとに虹が出た瞬間」とか「帰り際に立ち寄った小さな店で、店主さんと話し込んだ時間」みたいな、感情が動いた一場面と、最後にどう締めくくられたかだけが、長く印象として残ります。
逆に言うと、途中の小さなマイナスは、山場と終わりが良ければかなり薄まります。移動が少し大変だったり、途中でちょっとしたトラブルがあっても、最後に「ああ、来て良かったな」という感覚で終われれば、その旅行は全体としては良い思い出として保存される。これがいわゆるピークとエンドの働きです。
ストーリーにも「山場」と「締め」の位置がある
このピークと終わりの考え方は、ストーリーを書くときにもそのまま使えます。ざっくり分けると、どんなストーリーにも次のような流れがあります。
- 日常パート いつもの状態や、ふつうの風景。
- きっかけ 問題や違和感がはっきりする瞬間。
- 山場 一番感情が動いた場面や、大事な決断をした瞬間。
- その後 行動の結果、どんな変化が起きたか。
- 締め そこから自分が何を学んだか、今どう感じているか。
この中で、特に記憶に残りやすいのが「山場」と「締め」です。なので、ストーリーを書くときは「どこを山場として描くか」「最後の一段落で何を残したいか」を先に決めてから、それに向かって他のパートを組んでいくと、全体の印象がブレにくくなります。
山場は、感情が一番揺れている場面です。悔しさ、恥ずかしさ、安堵、怒り、安らぎ。どんな感情でも良いのですが「ここで自分の中の何かが変わった」と言える瞬間を一つ選びます。締めは、その山場を経た今の自分の視点です。「あのときは最悪だと思ったけど、今振り返ると」「あの出来事があったから、今の自分がいる」といった、少し俯瞰した一言を置く場所です。
メルマガやブログの中にもピークとエンドを作る
これは長いストーリーだけでなく、メルマガやブログの1記事レベルでも同じです。1本の中に、小さくても良いので「感情が動く山場」と「余韻のある締め」を用意しておくと、読後感がまったく違ってきます。
例えば、ストーリーの途中で、自分のダメだったところを正直に書く場面を一つ入れる。これだけで、読み手の感情は少し揺れます。「あ、自分と同じだ」と感じたり「ここまで言ってくれるんだ」と感じたり。そのあとで、小さくても前に進めた一歩や、視点が変わった瞬間を書いてあげると、そこが記事の山場になります。
締めのパートでは、単にまとめるだけではなく「読んでくれた人が、今日このあと何を感じてくれたらうれしいか」を一言だけ添えるようにすると、余韻が生まれます。要約だけで終わると、情報としては親切でも、心の中に残るものは少ないので「最後の数行は、少し感情寄りにする」と決めてしまうのも一つの方法です。
体験設計の中で「最後の数分」を軽視しない
これは文章だけでなく、講座やイベント、サービス提供そのものにも応用できます。例えば、講座を設計するときに、内容の密度ばかりを気にしてしまうと、最後の数分がただの事務連絡で終わってしまうことがあります。時間ギリギリまでスライドを詰め込んだ結果「では、詳しくは資料で復習しておいてください。以上です」で終わってしまうパターンです。
私はできるだけ、最後の5分〜10分は最初から「余白」として確保しておきたい派です。
その時間で、今日一番伝えたかったことを一言に絞って話す。参加者に一つだけ、今日からやってみたいことをメモしてもらう。あるいは、自分自身の正直な気持ちを短く話す。そのくらいで十分だと思っています。
内容の充実度はもちろん大事ですが、終わり方で体験全体の印象が決まるのであれば、最後の数分にこそ、少し余裕を残しておく価値があるなと感じています。
ではまた。
P.S.
私の私生活のピークとエンドの設計はだいぶ雑です。家族でどこかに出かけた日は、途中まではそれなりに気を配っているつもりなのに、最後のほうで「ちょっと仕事のことを思い出して無口になる」という悪い癖があって、エンドの印象を自分で下げてしまうことがあります。
あとから写真を見返すと、真ん中あたりの自分はそれなりに楽しそうなのに、帰り際だけ妙に疲れた顔をしているので「ああ、ここがエンドとして残るのか」と反省します。仕事のストーリー設計も大事ですが、まずは日常のエンドから整えた方がいいかもしれないと、自分に言い聞かせているところです。
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