この記事の結論
- 伝わるストーリーは「何を足すか」ではなく「何を削るか」で決まる
- 物語は「素材・解釈・目的」の三層構造で、目的から逆算して編集する
- 時間軸の整理と重複のカットを行うことで、自分の中心軸(コア)が浮かび上がる
どうも岩崎です。
前回は、ストーリーが大事だと言われているのを真に受けて、 自分史を全部しゃべろうとしてしまうパターンについて書きました。
あれからあらためて、自分の過去のプロフィールやLPを見返してみたんですが、 見事に同じことをやっていた時期があって、ひとりで苦笑いしていました。
頑張ってきたことも、しんどかったことも、 ぜんぶ分かってほしくて、できるだけ漏れがないように詰め込みたくなるんですよね。
ただ、読んだときにスッと入ってくるストーリーかどうかは、 どれだけ盛ったかではなく、どれだけ編集されたかで決まることが多いです。
今日は、ストーリーを増やす話ではなく、 ストーリーを削る側の話をしてみたいと思います。

盛りたくなるのは自然だけど、伝わるのは削った後
人は、自分の努力や苦労を軽く扱われるのが嫌です。 私もそうですし、きっとあなたもそうだと思います。
だからこそ、ストーリーを書こうとすると、
- これも話しておきたい
- あの時のエピソードも入れたい
- あの人に言われた一言も入れておきたい
と、どんどん増えていく。
でも、読み手の立場に立つと、 本当に知りたいのは、
- 自分とどこが似ているのか
- 自分と何が違うのか
- その違いが、自分にどんなヒントをくれるのか
この三つくらいだったりします。
つまり、ストーリーを盛れば盛るほど、 この三つがぼやけていく危険も同時に高まるということです。
だからこそ、本当にやるべきことは、
どれだけたくさん語るかではなく、 どこまで削っても伝わるか
を試すことなのだと思っています。
ストーリーは「素材」「解釈」「目的」の三層構造になっている
ストーリーを編集するとき、私がよく意識しているのは、 物語の中身をざっくり三つに分けて考えることです。
- 素材 実際に起きた出来事や事実
- 解釈 そのとき自分がどう感じたか、どう意味づけたか
- 目的 その話を通じて、読み手にどんな変化を起こしたいか
多くの人は、素材と解釈を全部見せようとしてしまいます。 一方で、一番大事なはずの目的が、抜けていたりする。
本当は逆で、
- 目的を先に決める
- その目的のために必要な解釈だけを残す
- その解釈を支える素材だけを、いくつか選ぶ
という順番で逆算していくほうが、伝わり方は安定します。
なので、ストーリーを削るときは、まず
このエピソードは、どんな変化を感じてほしくて入れているのか
と自分に問い直してみると良いですね。
削るときに見るポイントは時間軸と重複ときれいさ
とはいえ、いきなり全部を完璧に編集するのは大変なので、 私はいつも、次の三つだけをチェックしています。
1 読み手の悩みと関係のない時間軸を削る
まずは時間軸の整理です。
幼少期から今までを順番に書いていくと、どうしても話が長くなります。 なので、
- 今の仕事やサービスにつながる前の部分で
- 読み手の悩みと直接は関係ない時間帯
は、思い切ってカットすることが多いです。
例えば、今のテーマがメンタル不調からの回復だとしたら、 小学生の時の遠足の話は、よほど意味がない限り要らないかもしれません。
大事なのは、
いつ頃から、今の悩みにつながる変化が始まったのか
そこに絞って時間軸を切り取る感覚です。
2 同じ意味のエピソードは一つにまとめる
次に見るのは重複です。
ストーリーを書いていると、 似たような学びを伝えるエピソードが、いくつも出てきます。
例えば、
- 頑張りすぎて体調を崩した話
- 他人に合わせすぎて自分を見失った話
- 限界まで来て、初めて相談できた話
これらが全部、
無理を続けると壊れることに気づいた
という同じメッセージに収れんするのであれば、 代表的な一つをじっくり書いて、残りは軽く触れるだけでも十分です。
読み手は、
どれだけたくさんの失敗をしたか ではなく その結果、何に気づいたのか
のほうを見ています。
3 きれいに整いすぎた部分を一段だけ崩す
最後は、逆の意味での削り方です。
ストーリーを書いていると、つい
きれいにオチをつけたい
という気持ちが働いてしまいます。
その結果、
それ以来、私は一度も迷わなくなりました いつも自信を持って選べるようになりました
という、漫画の最終話みたいな終わり方になりがちです。
実際の人生は、そんなにきれいに一直線ではないので、 読み手は無意識のうちに、
いや、そんなにスッキリはいかないだろう
と感じています。
だからこそ、あえて
今でも揺れることはあるけれど、前よりは少し楽に選べるようになった
くらいの、生々しいところで止めておくと、 ストーリーとしての信頼感が上がります。
ここでは、余分なきれいさを削るというイメージですね。
削っていくと、最後に中心軸だけが残る
こうやってストーリーを何度も削っていくと、 不思議なことに、最後に残るものはいつも同じになります。
それが、自分の中心軸です。
どのエピソードを選んでも、 どのサービスの話をしていても、 どの媒体で発信していても、
どうしても外せないテーマや価値観が、にじみ出てくる。
私で言えば、
- 一発逆転より、積み重ね
- 自分も相手も潤う状態
- 目立たなくても、実質的な価値をつくる
みたいなところが、何を書いていても勝手に出てきます。
ここを無理やり盛る必要はなくて、 むしろ削っていった結果として残ったものを、
ああ、結局私はこういうことを大事にしているんだな
と確認するくらいでちょうどいいのかなと思っています。
短くしても伝わるかをテストするつもりで削ってみる
とはいえ、いきなり大胆に削るのは怖いので、 最初はテストのつもりでやってみると気が楽です。
例えば、こんな感じです。
元の文章が、
私は幼少期を田舎で過ごし、家の前には小川が流れていて、 夏になると毎日のように友達とザリガニを取りに行っていました。 あの頃は、時間を忘れて夢中になることが当たり前で、 夕方になると親に叱られるまで遊び続けていたものです。 そんな私が、いつの間にか時計と締切ばかりを気にするようになり、 気づいたら心の余裕がなくなっていました。
という長さだったとしたら、思い切って、
子どもの頃は、時間を忘れて遊べる子どもでした。 いつからか時計と締切ばかりを気にするようになり、 気づいたら心の余裕が消えていたんです。
くらいまで削ってみる。
そして、自分で読み比べてみて、
- 短いほうでも、言いたいことは伝わっているか
- むしろ短いほうが、次の話が気になるか
を感じてみる。
この感覚を何度か繰り返していくと、 どの程度まで削れるかの「自分なりの基準」がだんだん育ってきます。
ストーリーは増やす前に何を削るかを決める
今日の話を、あらためて一行でまとめると、
ストーリーを足す前に、先に何を削るかを決めておく
ということになります。
そのうえで、ポイントを並べると、
- ストーリーは盛るほど伝わるわけではなく、編集された分だけ届きやすくなる
- 素材、解釈、目的の三層に分けて、目的から逆算して構成する
- 関係の薄い時間軸は切り落とし、同じ意味のエピソードは代表一つにまとめる
- きれいすぎるオチは一段崩して、生々しいところで止めたほうが信頼されやすい
- 削っていくと、最後に自分の中心軸だけが残る
- 短くしても伝わるかを、テスト感覚で何度か試してみる
ストーリーが大事だと言われると、 どうしても「足りないから足そう」という発想になりがちですが、 実際には、
余分なものを引いていった結果、芯だけが浮かび上がる
という側面も大きいと感じています。
明日は、今回の話をもう一歩進めて、 自分のストーリーをそのまま使うのではなく、
読み手ごとに「長さ」と「角度」を変えて使い回す
という話をしていこうと思うわけです。
P.S.
冒頭で「過去のプロフィールを見て苦笑いした」と書きましたが、 ここで正直に白状させてください。
実は、今日この「削る技術」についての記事を書いている私自身が、 一番盛りまくっていました。
「あれも伝えなきゃ」「この例えも入れたい」と熱くなってしまい、 気づけば初稿は、今の倍くらいの文字数になっていたんです…。
「ストーリーは削れ」と偉そうに語っている本人が、 一番「捨てられない病」にかかっているという、なんとも恥ずかしい話です。
頭では分かっていても、やっぱり 「もっと自分を知ってほしい」「分かってほしい」 という人間本来の本能には、なかなか勝てないものですね。
偉そうなことを書きましたが、私もまだまだ修行中の身。 泣く泣く削ったこの原稿の切れ端を供養するために、 今夜は少し良いビールでも飲もうと思います。
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