この記事の結論
- 孫子の「兵は 拙速を聞くも 未だ巧久を覩ざるなり」は、多少粗くても早く終わらせる方が、長く引き延ばされた完璧よりはるかに価値が高い、という話だと読めます。
- 準備ばかりが長引くと、「機会損失」「気力の消耗」「周囲の温度低下」という見えないコストがどんどん積み上がっていきます。
- 大事なのは、最初から完璧を狙うことではなく「小さく出してから、走りながら改善する」設計にして、長引かせないこと自体を一つの技術として身につけることです。
どうも岩崎です。
今日は「兵は 拙速を聞くも 未だ巧久を覩ざるなり」という一節から、完璧主義とスピードの話を整理してみます。ざっくり訳すと「兵は拙い速さは聞いたことがあるが、うまくて遅い戦いは見たことがない」という感じですね。
私なりに噛み砕くと、「多少荒くても早い方が、どれだけうまくても遅すぎる戦いより強い」ということです。これ、仕事でもビジネスでも、かなりそのまま当てはまる感覚があります。

準備中で止まる人の思考構造
まず、準備中で止まり続けてしまうときの頭の中を、少し分解してみます。感覚としては、こんな流れになっていることが多いです。
- 「せっかくやるなら、ちゃんとしたものを出したい」と思う。
- ちゃんとしたものを出すには、時間とエネルギーが必要だと感じる。
- 今は忙しいから「落ち着いたら一気にやろう」と先送りする。
- 時間が経つほどハードルが上がり、「ここまで温めたんだから失敗できない」とさらに動けなくなる。
結果として、「やったらいいのは分かっているけど、まだ準備中」という状態が長く続きます。頭の中ではずっと稼働しているので、本人としては頑張っている感覚があるのですが、現実の世界では何も変わっていない、というギャップが生まれます。
これは責任感が強い人ほど陥りやすいパターンで、「適当なものを出したくない」という気持ちが、そのままブレーキになっているケースですね。
「早く終わらせること」の価値
一方で、孫子がわざわざ「拙速」を持ち上げているのは、早く終わらせること自体に大きな価値があるからだと思います。
早く終わらせると、何が起きるか。
- 市場や相手の反応が、実際の数字や声として返ってくる。
- 次の一手を、机の上の妄想ではなく現実をベースに決められる。
- 自分やチームの頭の中のメモリが空き、別のことに集中できる。
準備が完璧かどうかは、出してみないと分かりません。むしろ、出してみたときの反応を踏まえて、ようやく「何が足りないのか」「どこを直すべきなのか」がハッキリしてきます。
つまり、「早く終わらせる」ことは、「早く学べる」「早く次に進める」という意味でもあります。ここを理解すると、拙速と巧久の価値がひっくり返って見えてきます。
改善は走りながらでいい、という設計にする
とはいえ「じゃあ全部とりあえず出せばいいのか」というと、それも違います。大事なのは、最初から完璧を目指すのではなく、「走りながら改善する前提の設計」にしておくことです。
例えば、こんなイメージです。
- 最初はベータ版として出し、「知り合い限定」「既存のお客さん限定」から試す前提にする。
- 1回で完結するものではなく、「初回版」「第2版」とアップデート前提のコンテンツ設計にしておく。
- フィードバックをもらう仕組みを最初から入れておき、改善の材料を自動的に集める。
これを決めておくだけで、「完璧にしてから出さなきゃ」というプレッシャーがだいぶ下がります。拙速で出すことが雑になるのではなく、「最初の一歩のハードルを意図的に下げる」というイメージですね。
長引かせたときに発生する「見えないコスト」
逆に、長引かせてしまったときに、どんなコストが発生しているかも一度整理しておきます。
- その企画が走っていたはずの期間の、機会損失。
- 「やらなきゃな」と思い続けることによる、気力の消耗。
- 周囲の期待が冷めていき、「あれどうなりました?」と聞きづらい空気ができる。
どれも、数字としては見えにくいですが、じわじわ効いてきます。準備が長くなればなるほど、「ここまで待たせたんだから中途半端なものは出せない」という心理的なハードルも上がっていきます。
この意味で、「長引かせないこと自体が、かなり大きな技術だな」と最近よく感じます。うまさよりも、終わらせる力の方が先に必要、という感覚です。
明日は、この1週間の締めとして「孫子兵法を一言でまとめるとしたら」というテーマから、「勝ち方」ではなく「負けない在り方」としての孫子を整理してみます。
ではまた。
P.S.
拙速が大事だと分かっていながら、家の中には「いつかちゃんと読もう」と思って積まれた本の山があります。
読み始めれば数十分で1冊終わるはずなのに、積んでいる期間だけは1年以上に伸びていくという不思議な現象です。まずはその山から攻略しないと、孫子に怒られそうな気がしています。
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