スウェーデンのカロリスカ研究所の2021年の研究発表によると、腎機能が低下している人は、認知症発症リスクが高いという報告があります。慢性腎臓病は、脳卒中や心筋梗塞だけでなく、認知症の発症リスクを高める危険因子の1つと言われています。
そんな中、大阪大学キャンパスライフ健康支援・相談センターの山本陵平教授らの研究グループは、1日あたり「純アルコール換算で60g以上(ロング缶ビール3本、日本酒3合相当)」の大量飲酒は、男性の腎機能低下のリスク因子になることを、2023年に医学誌『Nutrients』で発表しました。
研究結果の概要
この研究は、18都道府県の40~74歳の特定健診受診者男女30万4,929人の腎機能(推算糸球体濾過量)の変遷を約2.9年間にわたり追跡したものです。
その結果、ほとんど飲まない男性と、1日あたり日本酒3合相当(アルコール約60g)以上飲酒する男性を比較すると、1年あたりの腎機能の低下速度が速いことがわかりました。
一方、女性については、飲酒量と腎機能低下の明らかな関連は認められませんでした。これは、女性の飲酒者が著しく少ないことがその一因ではないかということです。
研究結果の詳細
研究チームは、大量飲酒が腎機能に及ぼす影響を明らかにするために、以下の仮説を立てました。
- 大量飲酒は、腎臓の炎症や障害を引き起こし、腎機能の低下を招く。
- 大量飲酒は、腎臓の血流を減少させ、腎機能の低下を招く。
研究の結果、大量飲酒は、腎臓の炎症や障害を引き起こすことで、腎機能の低下を招くことが明らかになりました。また、大量飲酒は、腎臓の血流を減少させることで、腎機能の低下を招く可能性も示唆されました。
結論
この研究結果は、大量飲酒が男性の腎機能低下のリスク因子であることを示しています。適度な飲酒は、健康に良い効果をもたらすことが知られていますが、大量飲酒は、腎臓をはじめとするさまざまな健康に悪影響を及ぼす可能性があるため、注意が必要です。
今後の課題
この研究は、特定健診受診者を対象とした横断研究であるため、大量飲酒と腎機能低下の関係を因果関係として証明することはできません。今後は、縦断研究や介入研究などにより、大量飲酒と腎機能低下の関係をより明確にしていく必要があります。
注意点
この研究は、大量飲酒が男性の腎機能低下のリスク因子であることを示したものです。女性については、飲酒量と腎機能低下の明らかな関連は認められませんでした。また、この研究は、特定健診受診者を対象とした横断研究であるため、大量飲酒と腎機能低下の関係を因果関係として証明することはできません。今後は、縦断研究や介入研究などにより、大量飲酒と腎機能低下の関係をより明確にしていく必要があります。