スポーツや音楽、仕事など、チームで活動する場面で、誰もが経験したことがある「最高のパフォーマンス」。まるで別人のように集中力が高まり、チーム全体がシンクロし、圧倒的な成果を生み出す瞬間です。この状態は「チームフロー」と呼ばれ、近年注目を集めています。
豊橋技術科学大学と東北大学は、世界初の試みとして、チームフロー時の脳波と脳領域を特定することに成功しました。この研究は、チームワークや個人のフロー状態と比較することで、チームフローの心理状態を客観的に解明し、そのメカニズムに迫りました。
チームフローとは?
チームフローとは、チームメンバーがそれぞれ「ゾーン」に入り、協調しながらタスクを達成する状態です。通常の限界を超えた調和のとれたパフォーマンスを発揮し、スポーツチーム、ダンスチーム、音楽バンド、さらには仕事のプロフェッショナルチームなど、様々な場面で経験されています。
研究内容
研究では、2人1組で音楽ビデオゲームをプレイする実験を行い、それぞれの脳波を同時に測定しました。フロー状態をコントロールするため、通常のプレイ環境に加え、以下の条件を設定しました。
- パーテーションで顔が見えない状態:ソロフローは可能だがチームフローは不可能
- 音楽を編集した状態:フロー状態になれないがチームワークは維持可能
ゲーム後に参加者にアンケートを行い、それぞれのフロー状態レベルを評価しました。
驚きの結果
ソロフロー、チームワーク、チームフローの脳活動を比較した結果、チームフロー状態では側頭葉にある中側頭皮質でベータ波とガンマ波が増加していることが判明しました。さらに、チームメイトの脳活動が通常のチームワーク状態よりも強く同期していることも明らかになりました。
チームフロー研究の活用
この研究成果は、スポーツ、音楽、ゲーム、ビジネス、エンターテインメントなど、様々な分野でパフォーマンス向上に役立つ脳神経モデルに基づいたチーム作りの戦略に活用できます。
研究者らは、今後政府機関や産業界と協力し、チームパフォーマンスのモニタリングや強化、より効果的なチーム構築を目指しています。
楽しさを維持しながらパフォーマンスを向上させることは、うつ病やパニック障害、不安症などの発生率を低減し、生活の質向上にもつながる可能性があります。チームフロー研究は、これらの治療法開発にも応用されることが期待されています。
参考資料
豊橋技術科学大学 プレスリリース:https://www.tut.ac.jp/docs/PR211006-1.pdf
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