ネガティブな記憶が脳に与える悪影響は、長年研究されてきました。 辛く悲しい出来事を繰り返し思い出すことで、脳はストレスを受け続け、うつ病などの精神障害を引き起こす可能性があります。そのため、ネガティブな思考を抑制したり排除したりすることが、うつ病改善の重要な鍵と考えられてきました。
しかし、近年、ネガティブな思考を排除するだけでは、根本的な解決にはならないことが明らかになってきました。なぜなら、ネガティブな思考を抑制し続けることは、自己肯定感を低下させ、さらなる精神的な負担に繋がる可能性があるからです。
そこで注目を集めているのが、ポジティブな思い出の力です。国立研究開発法人 量子科学技術研究開発機構の研究グループは、ポジティブな感情を高める記憶を想起しやすい人とそうでない人の脳活動の違いを調べ、驚くべき発見をしました。
ポジティブな記憶を想起しやすい人ほど、前頭葉と側頭葉のネットワーク結合が強いことが判明したのです。
前頭葉は、感情や意思決定、計画性などを司る脳の重要な部位です。側頭葉は、記憶や感情処理に関わる重要な部位です。これらの部位間の強いネットワーク結合は、ポジティブな感情を想起しやすくなり、ストレス耐性を高め、うつ病の改善に繋がる可能性を示唆しています。
この研究成果は、うつ病治療に大きな希望をもたらします。
- 薬に頼らない、安心で安全な治療法の開発につながる可能性があります。
- 脳トレーニングなど、日常生活に取り入れやすい方法で、ポジティブな記憶を想起しやすくなる訓練法が開発されるかもしれません。
- ストレス耐性を高め、心身の健康維持に役立つ可能性があります。
昨今、精神的なストレスを抱える人が増え、国内のうつ患者数は127万人超に達しています。 薬物療法以外にも、脳ネットワーク強化によるポジティブな精神状態の保持は、多くの人にとって希望となるでしょう。
さらに、研究からは、
- 自ら積極的に楽しかった記憶、うれしかった記憶を思い出し、じっくり味わうこと
- 日常生活の中でポジティブな感情を意識的に体験すること
が、ストレスに強い脳を作ることに繋がる可能性を示唆しています。
ポジティブな思い出を大切にすることは、単なる精神的な慰めではなく、脳を守る重要な要素なのです。
参考
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