握力は、単なる力の強さではなく、全身の健康状態を反映する重要な指標です。
特に中年期において、握力が低下することは、認知症の発症リスクを大きく高めることが recent な研究で明らかになっています。
なぜ握力が認知症リスクと関係するのか?
その理由を、科学的なエビデンスに基づいて詳しく解説します。
握力と認知症リスクの関係
2022年に発表されたカリフォルニア大学サンフランシスコ校の研究では、約20万人の男女を対象に、平均11.6年間追跡調査を行いました。
その結果、握力が5kg低下するごとに、認知症の発症リスクが以下の通り大幅に上昇することが判明しました。
- 全体: 男性1.16倍、女性1.14倍
- アルツハイマー型認知症: 男性1.11倍、女性1.13倍
- 血管性認知症: 男性1.23倍、女性1.20倍
つまり、握力が弱いほど、認知症を発症する可能性が格段に高くなるのです。
さらに、記憶と知能という2種類の認知機能のスコアも、握力が5kg低下するごとに有意に低下することが示されました。
脳のMRI検査では、握力と全脳容積および海馬の容積の間には関係が見られなかったものの、認知機能低下に関連すると言われる大脳白質病変の容積が、握力が5kg低下するごとに男性で92.22mm³、女性で83.56mm³大きくなっていました。
これらの結果から、握力と認知機能の間には密接な関係があり、握力が低下することは、脳の白質病変の増加と関連し、認知機能低下のリスクを高めることが示唆されています。
中年期の筋トレが認知症予防に役立つ理由
研究では、65歳未満と65歳以上で同様の結果が得られたことから、中年期以降の筋力低下が認知症リスク上昇に影響することが考えられます。
中年期は、筋肉量や筋力が自然と低下していく時期です。
しかし、運動や筋トレなどの習慣によって、筋力維持や向上を図ることが可能です。
握力を鍛えることは、全身の筋力向上にもつながり、血流改善や脳への酸素供給量増加などの効果も期待できます。
これらの効果は、認知機能の維持や向上にも役立つと考えられます。
つまり、中年期から積極的に筋トレを行うことで、将来の認知症リスクを軽減し、脳の健康を維持できる可能性があるのです。
握力を鍛えて、認知症予防を始めよう!
握力は、自宅で簡単に測定できる指標です。
握力計を使って、定期的に測定し、記録することで、自分の握力レベルを把握することができます。
握力低下を防ぎ、認知症リスクを軽減するためには、以下の点に意識しましょう。
- 週に3回以上、30分程度の運動を習慣化する
- 特に、握力や全身の筋力を鍛える筋トレを取り入れる
- 日常生活の中で、階段を使うなど、体を動かす機会を増やす
- バランスの良い食事を心がけ、栄養不足にならないようにする
- 十分な睡眠をとる
- ストレスを溜めない
握力を鍛えることは、認知症予防だけでなく、生活の質向上にもつながります。
今日から、握力測定を始めて、健康的な生活習慣を心がけましょう。
参考
この研究は、手握力(HGS)と認知症、認知機能、脳神経画像の関連性を調査したものです。190,406人の成人を対象に、HGSが認知機能や認知症のリスクと関連していることが示されました。特に、血管性認知症との関連が強かったことが示唆され、筋力を増強する介入が神経認知脳の健康維持に有望である可能性が示されました。
いわさき写真教室をもっと見る
購読すると最新の投稿がメールで送信されます。